60年代ヒッピー再び
最終日フィールド・オブ・ヘブン。トリを飾ったのは初来日のダーク・スター・オーケストラ(以下DSO)だ。DSOはグレートフル・デッドのコンサートを完全再現するというバンド。これがただのトリビュートバンドではないのだ。これまで結成から13年間でおよそ1800公演を超えていて、多くのデッドヘッズ(グレートフル・デッドの熱狂的なファンの総称)から支持を受けている。これまで、ボナルーなどの主要フェスティバルにも登場しているし、極めつけにはグレートフル・デッドのメンバーが新しく結成した”Furthur”というバンドでギターを弾いているのは、まぎれもないDSOでジェリー・ガルシアのパートを演奏しているジョン・ケイドルシックなのだ。残念ながらジョンはこのすっぱ抜きにより、DSOを脱退してしまう。だが本家も認めるDSOの演奏力。この情報だけでもヘッズにとっては垂涎ものだろう。
さて即興と言えばデッド!というほどジャムバンドの王様的存在のトリビュートバンドなのだから、ジャムバンド好きにはたまらないライブだった。数あるインプロバンドが、時間が経過していくと共に演奏のテンションを上げていくのに対しデッドの演奏はゆったりしている。深夜のフィールド・オブ・ヘブンにぴったりとはまっていた。時間の流れすら遅くなったかのように、スローな雰囲気というか、お客さんはゆったりそれぞれの時間を楽しむように踊っていた。今回のライブはアンコールを合わせて3時間50分。最初から最後までいたお客さんも多かったと思うが、演奏が終了しても拍手は鳴り止まなかった。これまでフジロックで様々なバンドのライブを体験してきたが、DSOが作り出す音楽とその空間・雰囲気はこれまでに感じたことのない位、ピースフルなものだった。最後にMCで彼らが言った「Thank you. PEACE!!」という言葉が耳から離れないほどに。
文:丸山亮平
写真:北村勇祐 (Supported by Nikon)