オレンジコートを見下ろしながらぐるりと歩き、フジ最奥地のカフェ・ド・パリを目指す。ちらちと見えてくるのは、トリコロールカラーで仕立て上げられた小さな劇場風の小屋からはすでに人があふれ、中の様子をうかがうことは難しい。ちょうど入口とステージが同じサイズに見える位置になると、ステージがまるでテレビのなかで繰り広げられる映画のような錯覚にも陥る。画面の中では、なにやら男と女の事情色めく物語が繰り広げられていくのだった。
物語の主人公は、フジでもお馴染みもお馴染みなビッグ・ウィリーズ・バーレスク。古めいたキャバレーには今日も多くの好き者が集まる。軽快なリズムのジャズにのせられ、八頭身なスレンダー美人ダンサーがおじさまの待つステージに華麗に登場すると、こちらお客様席も大興奮なのは簡単に予想できたものだ。そりゃ、ドラムを叩く手からスティックも漫画のように空中をくるくる回るは、美人ダンサーを膝に乗せてはご満悦。男の人ならば、あんなモテる男と錯覚するような絡まれ方は夢の光景間違いなし。美人ダンサーがステージを去ると、続いてはガーターベルトがちらりと除く真っ黒な衣装の女性が登場。ギターにベース、キーボードが奏でる音楽も、美女を最大に引き立たせ、目の前の男と女の事情を繰り広げる物語の一部のようだ。お客様席からは、音楽に向けられる賞賛の拍手ではない、ステージ場の演奏者、観客を越えた一体感からくる喝采が飛び交っていた。まさしく、単なる音楽ではないエンタテイメント、素晴らしきショウだった。小さな箱を出るとそこは、やっぱり日本は苗場、あの箱の持つ空気感もやっぱり苗場。
写真:加藤智恵子