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7/26 SATFIELD OF HEAVEN

PHIL LESH & THE TERRAPIN FAMILY BAND

デッド・ヘッズが集まる日

今年の2月にフジロックのアーティスト発表第一弾の段階で、フィルの名前が発表された。このニュースによって界隈では震撼したのではないか。どのくらいすごいことなのかというと、このフィル・レッシュ、伝説とされ今でも崇拝されているギタリスト、ジェリー・ガルシアが在籍したバンド、グレイトフル・デッド(以下デッド)のベーシストだったのである。1995年にジェリーが急逝し、デッドは活動を休止している。その間来日は無かったため、ジェリーはもちろん、フィルも来日したことはなかったのである。つまり、今回が初来日となる。グレイトフル・デッドがついに初来日したと言っても過言ではないのである。

テラピン・ファミリーバンドについても説明したい。フィルは2012年サンフランシスコに、テラピン・クロスロードというライブハウス付きのレストランバーを開いた。この中でデッドの音楽を後世に伝えようとフィルがリーダーとなり、結成されたのがテラピン・ファミリーバンドなのである。さて前置きが長くなったが、そんなデッドサウンドを完全に受け継ぐフィルが発表されようもんなら、デッド・ヘッズ(グレイトフル・デッドの熱狂的なファン)たちがだまっているわけがない。さらに3時間半の枠が与えられている。これに浮き足立たない人がいるのだろうか。

開演40分前、すでにフィールド・オブ・ヘブンのステージ前方からPAにかけて、デッド・ヘッズたちで埋まっていた。タイダイ柄のTシャツ、長いヒゲ、デッドベアが描かれた旗などが目立っていた。あきらかに普段のヘブンの雰囲気とは異なっていた。30分前になるとリハーサルで本人たちが顔を出した。それだけで、まるでライブが始まったかのような盛り上がりを見せ、登場を今か今かと待ち望むヘッズたちの熱気であふれていた。

オンタイム、ステージが暗転して会場だけが照らし出される。ステージ場にメンバーを確認すると大歓声がヘブンを包んだ。おもむろにフィルと息子のグラハムがセッションを始め、静かに曲が始まる。そしてツインドラムがリズムを刻み、曲のリズムが生まれた瞬間、一斉にグロウスティックが投げられたのだ。曲が盛り上がればまたグロウスティックが投げられ、の繰り返しで、まるで戦争をしているかの様子。この現象はグロウ・スティック・ウォーと言われている。ジャムバンドで多く見られる現象だ。序盤のヘブンの空にはキラキラした何色ものグロウスティックが彩りを加えていた。ヘッズたちがフィルを歓迎している様子がとてもよくわかる光景だった。とうのフィルもとても楽しそうに演奏していて、またバンドのメンバーたちものびのびと演奏しているように見えた。連続して2曲をやり遂げ20分。「Thank you. Fuji Rock」とフィルの初めてのMCがなされると、大歓声があがる。この頃にはヘッズの盛り上がりが伝播し、ヘブン全体を観客が埋め尽くすほどになっていた。4曲目では、エミリー・サンダーランドが女性ボーカルとして呼び込まれ、また違った雰囲気の楽曲が奏でられる。1時間の演奏の後、第1部が終了した。

20分の休憩を経て第2部が始まる。この時間帯となると裏ではヘッドライナーの時間だ。さすがにこの休憩のときに観客がばらけ、全盛の半分くらいになっただろうか。それでもヘッズたちは関係ない。むしろ踊る場所が増えたと言わんばかりに、縦横無尽に踊り、声でフィルの演奏に応えていた。観客すべてがとても幸せそうで、終止笑顔だったのがとても印象的。演奏はというと、第2部は若干尻上がりな感じはあったにせよ、グレイトフル・デッドの曲はもちろん、ニール・ヤング、ザ・バンド、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドなどの歴史的なアーティストによる名曲をカバーしたりと、サウンドにとても幅があり、終止楽しませてくれた。ただ一つ残念なのは、19時半から23時まで、3時間半のアクトが発表されていたのに、実際には22時20分ほどまでで、1時間強も早く終了してしまった。アンコール含めて約4時間デッドの音楽に浸れると期待していた方には、少し物足りなかったのではないだろうか。その証拠に終了30分たった今でも、観客はまだ残っており、名残惜しそうに片付けられる機材を眺め、フィルの乗るバスを送り出していた。再来日のニュースが早く見られることを切に願う。

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