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7/27 SUNGYPSY AVALON

アトミック・カフェ TOSHI-LOW <Guest:YAMAZAKI(toe)>

その生き様が鳴っている

「地震の後には戦争がやってくる」――TOSHI-LOWはステージに登場するなり、忌野清志郎が湯川れい子に送った「清志郎の手紙」を朗読する。昨年のフジロックのグリーンステージで、BRAHMANのライブの時にもMCで語った詩だ。そしてアコースティックギターで弾き語りしたのは、RCサクセションの”明日なき世界”。力強さと物悲しさを併せ持ったTOSHI-LOWの歌声が、ジプシー・アバロンの後ろまでいっぱいに集まったオーディエンスを心に染み渡っていく。「フジロックのステージを、3日間で7回ぐらいやらせてもらって。清志郎の5回っていう記録を抜いた記念に歌わせてもらいました」と語り、「とりあえず、乾杯していいですか?さっき武藤昭平が、乾杯はスペイン語で『サルー』だっって言ってたんで……乾杯!」と紙コップを高らかに掲げる。

「弾き語りポロン、なんてカッコ悪いと思ってた。でも、なぜかこうやってやらされている。自分ではどうしようもないことが人生はたくさんあって、震災だってその一つだと思う」と語り、「阪神淡路大震災の真ん中で歌われた曲を歌います」とソウル・フラワー・ユニオンの”満月の夕”を披露する。80年代のバンドブームが大好きだというTOSHI-LOW。かつては音楽に政治的な主張を持ち出すことに抵抗があったが、その世代のミュージシャンたちが歌ってきた戦争反対、原発反対というメッセージが、自分の中に根を張っていることに気づいたのだと語る。ただのカバーではなく、彼はいま自分の原点を歌っているのだ。

続いてはルースターズの”GIRL FRIEND”。「(この後、グリーンステージに出演する)本人たちの曲、聴けばいいんだよな(笑)」と苦笑いするが、TOSHI-LOWの歌声にこんな表情があるのかと驚くほど瑞々しく優しかった。「1番と2番しかないこの曲に、勝手に3番と4番を足して、2014年に歌います」と、えびの”君がいれば”にオリジナルの歌詞を加えて歌うと、ゲストのYAMAZAKI(toe)をステージに迎える。2人でスタジオに入って「ガリガリ君」の話で2時間近く盛り上がったというくだらなすぎるエピソードを開陳しつつ、「俺たち2人が並んだらエモくない?ルックスが(笑)」と笑い合いながら2人で演奏したのは、ゆらゆら帝国の”空洞です”のカバー!TOSHI-LOW&YAMAZAKIバージョンの”空洞です”は、原曲が持つ切ないナンセンス感が後退し、ずいぶんとエモい。「空洞です」と言いながらも中身ギッチリな感じだ。「震災があるまで、ちゃんと歌の練習をして来なかった。音楽をナメてた」と振り返ったTOSHI-LOWだが、やはり彼は根っからのヴォーカリストなんだと思う。その歌声が伝えるものには、いつも彼らしい熱がある。

そんなTOSHI-LOWの姿をマジマジと眺め、「前から思ってたけど、TOSHI-LOWくん、君は素晴らしいね」とYAMAZAKIがしみじみ語る。20年来の仲間だけに、ここから良い思い出話になるのかと思ったら、「じゃあ、今度toeがフジロックに出る時、土岐麻子の代わりに歌って良い?」とTOSHI-LOW。するとYAMAZAKIが「カツラ被って女装したらいいよ」と提案し、まさかの「TOSHI-麻子」構想が持ち上がる。TOSHI-麻子、フジで見たいような見たくないような……。

東日本大震災の一週間後に奥さんを病気で亡くしたYAMAZAKIは、「今まで普通だと思っていたことが、奇跡的なバランスで成り立っているって気づいた。こうやってフジロックにみんなで集まってることも、奇跡なんだと思う」と語り、毎日、自分が本当にやりたいことに向き合っているかを自問するようになったと言う。そして2人でステージから捧げたのは、toeの”グッドバイ”とBRAHMANの”arrival time”だ。アコースティックのサウンドとTOSHI-LOWの歌声に感情が涙になって溢れだす人、続出。無理もない。この曲を、2人がこうやって歌う日が来るなんて、当の本人さえ想像してなかっただろう。

笑いあり、涙あり、結果20分押しのアコースティック・ライブは、言葉にも、音楽にも、彼らの生き様が響いてくるような凄みがあった。ジプシー・アバロンという少し寛いだステージだからこそ、2人の素の部分がいつも以上に伝わってきて、胸がいっぱいになった。

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