SYL JOHNSON, BOBBY RUSH & LAVELLE WHITE SOUL MUSIC LEGENDS
エネルギーはため込まず、すべて放出しようぜ!
今年のフジロック最終日のオレンジ・コートの有終の美を飾るのは、シル・ジョンスンとボビー・ラッシュの2名のブルーズ/ソウル・レジェンズだ(当初出演が予定されていたラヴェル・ホワイトは、体調不良のため残念ながら出演キャンセルとなった)。会場へ急ぐ途中、ヘブンを抜けた辺りでレジェンズを支えるバックバンドのリハの音が流れてきた。小気味よくカッティングをきめるギターに、その場を60年代にタイムスリップさせるかのようなザ・ソウルな楽しい音色響かせるブラス隊と、その流石としか言いようがないタイトな音に歩く速度が自然と速まってしまう。
開演予定時刻を若干過ぎた頃、バックバンドのメンバーがステージに登場し、ギタリストのジュン・ヤマギシが「お待たせしました」と一言。そして、バンドはジャムセッションをはじめる。すると、ステージの袖からボビー・ラッシュ御大がブルースハープをいなたく吹かしながら登場だ。ピンクのシャツにキラキラ光るスタッズを打ち込んだパープルのジャケットを羽織っている。相変わらず、衣装がキメキメじゃないか!もうこの瞬間だけで、ブルーズ・ファン昇天必至だろう。キーボード、ギター、ベース、ドラムとそれぞれがブルーズのマナーよろしくソロを披露していく。ソロをきめる度にフロアから拍手喝采がおくられ、それに応えるようにボビーのテンションもどんどん上がっていくのだ。ジュン・ヤマギシの流麗なギターとボビーのハープの掛け合いがたまらない。
自らの音楽歴を簡単に語った後、サックスとトランペットのブラス隊を呼び寄せ超名曲の”Chicken Heads”を奏ではじめた。腰が自然と揺れてしまうこの超絶ファンクネス。ダンスってのはこうするんだぜ!と自ら教示するかのごとく腰をセクシーにくねらせまくるボビー。これがもうじき80歳になろうかって男の動きかよ!?放出される色気ムンムンのエネルギーが半端ない。
これまた往年の名曲”Mary Jane”では、むせび泣くように弾きまくるギターソロ、それに絡みつくように吹き荒らすボビーのブルーズ・ハープが飛びだす。ボビーはおもむろにキーボード奏者のところまで行き、寄りかかって何かかっこいいことやれ!とはやし立てると、それに応えようと鍵盤をこれでもかと叩きまくり、ものすごいグルーヴ感を醸成する。それを見て、ボビーは満足げに微笑む。バンドとの息もピッタリだ。
縦ノリ感がたまらない”Night Fishin’” ではマイクを釣竿に見立て、釣りの仕草をしておどけてみせる。曲の締めにに必ず宙を舞うドラマーもそうだが、「笑い」の仕掛けも随所に仕込んでいるのが実ににくい。レジェンズはパフォーマンスも最上級。修羅場の数が違うってやつだ。「俺には3つの問題がある。それはな、1に女、2にガールフレンド、3に妻さ!」と”I Got 3 Problems”を卑猥に発進させ、エルモア・ジェームスの”Shake Your Moneymaker”でオレンジ・コートをブルーズ天国へと誘ってセットを締めくくった。
それにしても何って豪華な夜なんだ!ボビーのステージだけでも大満足なのに、お次はソウル・レジェンドのシル・ジョンスンが登場するのだから(御年78歳!)。シルは、蝶ネクタイとスーツでバシッときめている。「1967年の曲をやるよ!」と、はじまったのはシカゴのトゥワイライト時代の超名曲の”Come On Sock It To Me”だ!あのギターのイントロが流れただけで、大歓声が上がる。シルは「ヘイ!ヘイ!フィール・オーライ!!」とコール・アンド・レスポンスさせ、容易に会場をひとつにまとめてしまう。
その後も、シルが奏でる乾いたギターの音色がたまらなかった”Any Way The Wind Blows”、心の琴線に触れるマイナー調のメッセージ・ソングの”Is It Because I’m Black”とソウル・ファン垂涎の名曲を立て続けに披露してくれる。”Ms. Fine Brown Frame”ではボビーも再登場し、2人のレジェンドによる桁違いのエネルギーで思い切り会場をファンクした上で、そのままハイ・レコーズ時代の大ヒット曲、アル・グリーンの”Take Me to the River”を投下した。シルとボビーが大迫力で交互に歌い上げる。ブルーズ・ハープの掛け合い合戦を繰り広げたり、いつの間にか2人のエネルギーがぶつかり合うバトルへと展開し、極めてスリリングに進んでいく。シルはここでも、オーディエンスにコール・アンド・レスポンスによる強制参加を求め、バンドの圧倒的なグルーヴとともにラストスパートをかける。その後、鳴りやまない拍手にアンコール1曲をプレゼントし、居合わせたオーディエンスをバックに集合写真を撮って、シルは片言の日本語で「あなたを愛しています!サヨナラ!!」とにこやかにステージを後にした。
とにかくすごかった、ボビーとシルの放出する底なしのエネルギー。これは、ひとつひとつのステージに持てるエネルギーをすべてを出し切っているからこそ、この無尽蔵のエネルギーを得ることができ、オーディエンスを心底熱くすることができるのだろう。「最高のライヴ」なんて域を優に超え、明日からの生き方が変えられてしまうような、そんなライヴを体験できた。
posted on 2014.7.27 21:00
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