ROOKIE A GO-GO 7/24 SUN TAGS : LIVE REPORT 7/24 SUN ROOKIE A GO-GO

MONO NO AWARE

Photo by サイトウマサヒロ

LIVE REPORT

何故か国家の大合唱!展開が全く予想出来ない不思議空間

長いようで、一瞬にして終わってしまった、20年目のフジロック。そんな記念すべき年のルーキー・ア・ゴーゴーのトリを務めるのは、モノノアワレだ。

あと数時間経てば、いつもの月曜日が来るというのに彼らの登場を心待ちにしている沢山の観客たち。そんな中、いきなり流れだす国歌”君が代”。メンバー全員が速足に登場し、右腕を左胸に押し当て、無表情で立ち尽くしている。そんな姿を見た観客からは、温かな笑いと拍手が起きる。

まずは、”井戸育ち”。東京から、鈍行列車で遠くの田舎へと帰る時に聴きたくなるような、どこか懐かしく爽やかな一曲。大自然の中、天井も壁も何もない、星空の下で聴くには最高!心地よく耳に残る加藤成順(Gt&Cho)のギターサウンドに、癖になってしまう玉置周啓(Vo,Gt&Syn)の歌声。前に出てこない竹田綾子(Ba&Cho)のサウンドも、複雑な楽曲を実は支えている。次の展開が予想できない個性的なメロディラインはふとした瞬間につい口ずさんでしまいそうだ。音源とはまた一味違った印象を与えてくれるのも嬉しい。ステージ前方の観客は、残りの体力を振り絞って飛んだり跳ねたりしている。

2曲目の”イワンコッチャナイ”では、工藤静香の”嵐の素顔”でお馴染みのダンスをし、どこまでもふざけている玉置。その後MCでもフジロックでの思い出を淡々と語り、観客の笑いをかっさらっていく。「フジロックのことを歌った曲です」と言い、演奏される”明日晴れたら”。「や~やや~やや~」という不思議な歌詞とゆったりとしたテンポから、昭和歌謡曲のような曲なのかと思いきや、いきなり転調。曲調が大きく変化しすぎて、全く休まる暇がない。

本編最後には”me to me”。最後の最後に相応しく、力強いドラムを叩く柳澤豊(Dr&Cho)。タイトルと「目と目」という歌詞。独特すぎるリズムに、喜怒哀楽の掴めないボーカル。そこにはめ込まれた洒落の利いた様々な言葉遊びは、聴く度に新たな発見があり、思わずにやけてしまいそうになる。どこでどんな風に育ったら、こんな曲が出来上がるんだ。パットを利用し、ルーキー3日間で最も頭と内臓に響くドラムも音。疲労を溜め込みまくった深夜3時半に、この大音量はキツい。「来年また、レッド・マーキーで会いましょう!」と玉置があまり欲張らないMCをする。そこはさ、グリーン・ステージとか言えばいいのに…。来年の今頃、レッド・マーキーに立っている彼らの姿が、簡単に想像出来てしまう。

曲が終わったにも関わらず、何故か君が代を歌い出す玉置に、一緒になって歌い出す観客。日本人であれば当然知っている曲だけに、何故か大合唱が起こる。一体なんなんだ、このバンドは。
そんな予想斜め上のキャッチーさもあってか、拍手が鳴りやまず、想定外のアンコール。マイクを通じても全然聴こえない下手くそな口笛も印象に残っている。一夏の思い出にはぴったりの、なんだかずっと終わって欲しくない名残惜しさを感じさせるステージであった。

Text by あたそ Posted on 2016.7.24 16:18