STEREOPHONICS
人を優しくさせるメロディ
フジロック最終日も早いもので15時前。終演の足音が聞こえてきて、寂しくなってくる。これからグリーンステージに登場するのは、多くのアルバムが全英No.1を獲得しているイギリスの国民的ロックバンド、ステレオフォニックスだ。
リンク・レイの”Rumble“が気だるく響き渡ると、フロントマンのケリー・ジョーンズを筆頭にバンドメンバーがゆったりとステージに登場した。最新作『Keep The Village Alive』のリードトラックの”C’est La Vie”からキックオフ。青春時代特有の疾走感と苦味が感じられるメロディに、オーディエンスはのっけから手を突き上げジャンプし盛り上がる。
今年でデビュー20周年を迎える彼ら。楽曲の質や演奏の安定感がハンパない。爽やかさなキーボードの音色が心地よい”Mr and Mrs Smith”を挟み、問答無用に聴き手のテンションをあげる”The Bartender and the Thief”をドロップ。デビュー当時、ブリット・ポップが世を席巻していたイギリスで、この手のハードロック色の強い楽曲を持ち合わせたことが凡百のバンドとの違いをつくったのだろう。この曲の間奏部でケリーが「Ace of spades, Ace of spades…」と歌い上げたのを聴き逃さなかった。昨年のフジロックでのステージが日本におけるモーターヘッドのレミー・キルミスターの生前最後のライヴとなったと知って、レミーへのトリビュートをさりげなく入れてくれたんじゃないだろうか。
哀しげな”I Wanna Get Lost With You”のメロディが優しくグリーンステージ一体を包み込む。ケリーがアコギを手に「1, 2…」と掛け声をかけ、オーディエンスが「1, 2, 3, 4!!」と応じはじまった”I Wouldn’t Believe Your Radio”。間奏部で優しく爪弾かれるギターフレーズに酔いしれ、サビをみんなで合唱し感動を共有していく。ほんとにどの曲もすんなりとシンガロングできるのだからすごい。続く”Maybe Tomorrow”、”Local Boy in the Photograph”もラストは会場みんなでサビを歌い締めくくる。ケリーもオーディエンスの合唱に満足気に「ビューティフル!」と一言。
ケリーが初めてフジロックに来た当時を振り返る。「あれは1998年だったな。イギー・ポップやビョークがいて、本当にブリリアントな(素晴らしい)時間を過ごしたよ。みんなも今、素晴らしい時間を過ごしてね!」と”Have a Nice Day”を披露。晴れ渡った空のもと、優しく響き渡る。思わず目頭が熱くなってしまった。そのまま名曲”Local Boy in the Photograph”に流れ、感動に輪をかけて会場を包み込む。会場周囲の山の緑とどこまでも映えるメロディだ。その後も”Indian Summer”、懐かしの”A Thousand Trees”と優しい曲が続く。
ラストはやはりこの曲、”Dakota”だ。小刻みに挿入される心地よいキーボードの音に、サビではみなで手を突き上げ、ジャンプし大合唱し大団円を迎えた。う~ん、感動した。楽曲に散りばめられた極上のメロディに終始優しい気持ちにさせられたライヴだった。
-Setlist-
C’est La Vie
Mr and Mrs Smith
The Bartender and the Thief
I Wanna Get Lost With You
I Wouldn’t Believe Your Radio
Maybe Tomorrow
Pick A Part
Have a Nice Day
Local Boy in the Photograph
Indian Summer
Sunny
A Thousand Trees
Dakota