LIVE REPORT GREEN STAGE 7/30 SUN

BJÖRK

こんなに“人間らしい”ビョークを、見たことがあっただろうか?

2013年のフジロックでビョークが魅せたステージは、まさにエンターテイメントだった。天井に吊るされた巨大なテスラコイルが電流を発生させたり、火花が撒き散るなか、拳を上げて“Army of Me”を歌ったり。自然界の力を操るド派手な演出、その歌声、人間を超越した神秘的な存在というイメージを、彼女に感じていた人も多かったかと思う。それから2年ほど。『Vulnicura』がリリースされて、「神秘的」のイメージは変わっていった。同作は配偶者との別れという、これまでにないほどの個人的な感情を爆発させた、悲しくも痛々しいもの。いくら「世界の歌姫」「神秘的」と言われようが、ビョークだってひとりの女性で、人間なんだということに気づかされた。

そして、2017年。フジロック、最終日のヘッドライナーとして再び登場したビョークは、いつにもなく、人間らしいステージを見せてくれた。左右にオーケストラ(室屋光一郎ストリングス)、ビョークの後ろにはアルカがスタンバイ。ぽつぽつとつぶやくように“Stonemilker”を歌いはじめると、液晶に360度映像のプロモーション・ビデオが流れる。“llion song”では、複雑なトラックにアルカが手を加え、より立体的なサウンドへと仕上がっている。

“Come To Me ”“joga”“Unravel”“isobel”など旧曲もたっぷりと聴かせてくれて、気がつけばスクリーンにビョークの姿が解禁。手を右へ左へと動かしたりジャンプする演奏中の姿だけではなく、ワインや何かを飲む様子、靴に引っかかった衣装を直すところまで、しっかりと映されている。偶然なのかもしれないが、ここでもまた、普通の女性としてのビョークが強調されている気がしてならない。“Notget”、ジェシー・カンダのPVも含めた“Mouth Mantra”も披露し、アンコールではアルカの横にぺたんと座り“History of Touches”、締めくくりにはやっぱり“Hyperballad”!ストリングス、アルカのアレンジ、そしてビョークの力強い歌声。3つが絶妙に絡み合い、見たこともないハイパー・バラッドが生まれる。空には花火、ステージには炎が交互に打ちあがり、思わず感極まる観客も。

今回のビョークは、『Vulnicura』の強いメッセージ性を演出代わりにし、素晴らしいチームを率いてのシンプルな演奏であった。それは、アーティストではなく人間としてのビョークが自身の力でできることを表現した結果だ。今日の“Hyperballad”が代表するように、きっとこの先も今までに観たことがない技術やサウンドを操り、オーディエンスを驚かせてくれるだろう。

 Photo by Santiago Felipe  Text by 梶原綾乃 Posted on 2017.8.2 22:10