美しいものを見た、と思った。
フジロック初日。静かに降り続く雨、ほのかに飛び交うシャボン玉、優雅に舞う蝶々。そんなフィールド・オブ・ヘブンの午後に、SHERBETSが現れた。
"HIGH SCHOOL"から"リディアとデイビッド"の流れは静かに降り続ける雨空に劇的にハマっていた。キーボードからギター、タンバリン、コーラスと多彩なプレイを見せる福士の余裕の佇まいはひたすらクールで、浅井の研ぎ澄まされたギターの音色はレインコートに身を包む閉塞感に心地よく風穴を開けてくれるようだ。
ライヴ終盤、"ジョーンジェットの犬"が演奏されていた時のこと。演奏が佳境を迎えたその瞬間、雲間から一筋の日の光が差し込んで、ヘブン周辺がぱあー!っと明るく照らされたのだ。まるで照明が当てられたような光。演奏の興奮もあいまって、観客からも一斉に大歓声があがった。苗場で無ければ起こり得ない奇跡のような瞬間に、思わずこちらもゾクゾクしてしまった。最後の曲の頃にはまた雨が強く降り出してしまったのだけれど、そのどれもこれもが本当に美しかった。
「またどっかで逢おうぜ。みんなその時まで元気でな。」
浅井健一はそう言って去って行った。SHERBETSを愛する人たちのために、これからもずっとリアルな存在でいて欲しい、と強く思えるライヴだった。
写真:横山正人
文章:小田葉子