ダサさすれすれカワイイパワー
ステージ上のスピーカーの上にラメのまぶしい大きいリボンがまるで頭にのせるように飾られている。よく見るとバスドラムの上にも同じく大きなリボンが飾ってある。雨がパラパラ降っている上に、時々雷まで光っているという悪天候の中、CSSのメンバーがステージに現れた。ボーカルのラヴ・フォックスは7分丈の黒っぽいパンツに細かい柄の入ったシャツ、ラメラメのジャケット、そして襟元に赤いスカーフをリボン結びにしている。身に付けているいないの違いはあるが全員リボンである。それが世間一般でいうところのカワイイとは違うような気がしてしまうのはCSSの持つ妙ちきりんな雰囲気があるからだろう。あえて言うが奇妙ではなく「妙ちきりん」だ。
“Art Bitch”でステージの幕を開けると雨だとか雷だとか、吹き飛ばすなんてもんじゃない。無視、なんというかもう雷かわいそうなほどに完全無視。天気に気を取られてる暇なんてない、CSSショウの始まりだ!ラメのジャケットとシャツを脱ぎ捨てると、デカデカとTRASHの文字が書かれた真っ赤なTシャツ。裾はお腹が見えるくらいに切ってある。ダサさギリギリ、いや一般人なら確実にアウトなのにかわいく見えてしまうというのがラヴ・フォックスの魅力の1つなのだろう。ダンスが妙でも、メイクがちょっとキュートなプロレスラーみたいでも、むちっとしたお腹が見えてても、かわいいのである。
MCでは「八海山ダイスキ」と言ってステージ上で一升瓶からお酒をついだり、曲の最中では「ジャンプ!ジャンプ!」とオーディエンスを煽ったり、“Music Is My Hot Hot Sex”や“Let’s Make Love And Listen Death From Above”など盛り上がらずにはいられない曲では、ホットパンツになって髪を振りみだし、マイクをぶん回す。その後も客席におりたり、ステージ上で側転したり。「コングラッチレイション、サッカーチーム!」なんてなでしこジャパンへのお祝いの言葉もかけてくれた。そんな、やりたいことを思いついた瞬間に行動している自由奔放娘を見てるだけで元気になってしまうのに、サウンドもついてくるのだから楽しくないわけがない。
プライマル・スクリームのボビーが参加した曲“Hits Me Like A Rock”ではコーラスをみんなに歌わせ、最後の“Alala”を歌いきった後に側転しながらラヴ・フォックスはステージ袖に去っていった。押し付けがましくなく、こだわりはあるけど気取らないガールズパワーにサンキュウ!
写真:北村勇祐 (Supported by Nikon)
文:名塚麻貴