どんよりとした分厚い雲が空を覆いながらも、雨は全く降っていないホワイトステージ。そこでおもむろにサウンドチェックでニルヴァーナの“Smells Like Teen Spirit”を演奏し始めたのは10-FEETのメンバーである。そのあと、いつものSEに合わせて登場した3人はヘルメットとカッパを上下着込んだ完全フジロックスタイル!(ちなみにヴォーカル、タクマのジャンパーは今年のスタッフジャンパー)何故その格好を選んだのか……登場一発目で笑いを取るあたりがとても彼ららしい。
1曲目の“Super Stomper”から“VIBES BY VIBES”、“STONE COLD BREAK”とのっけからモッシュとダイバーが大量発生のキラーチューンを並べてくる。彼らの5年ぶりのフジロック。前回のレッドマーキーから、広ーいホワイトステージへと成長を遂げ、今か今かと待ちわびていたキッズたちがモッシュピット目がけて走りこんで行っているのがとても印象的であった。
雨が降った後は大体ひんやりするものなのだが、10-FEETが始ったときは違った……。熱い!暑い!湿気がじっとりと体にまとわりつき、周りでは着ていたカッパを脱ぎだす人が多数。中盤は“River”、“2%”、“1sec”がノンストップで繰り出されると、ホワイトステージの気温は更に上昇していたに違いない。それもきっと彼らのパワーがそうさせたのだろう。そんな中一番暑い思いをしていたに違いない本人たちは、カッパを脱がずに最後まで演奏しきった。すごい。
「わかってるよ。それぞれ大変なことあるよな。吹き飛ばせ!」
という言葉で始ったのは“風”。彼らと私たちの間には柵があって、またステージは高い位置に設置されていて。フェスでは特にバンドとの距離を感じずにはいられないが、それも10-FEETに限ってはそんな事はない。私たちのそばに寄り添い、前向きになれるような言葉を、いくつも投げかけてくれる。そうかと思えばコントのようなネタをステージ上で繰り広げ、オーディエンスと気さくに会話をする。どんな大きさのステージになっても、いつも通りの彼らであることを再確認できたステージングであったように思う。
レッドマーキー、ホワイトステージときたら……次のステージはグリーンステージしかないですよね。フジロックのメインステージに彼らの風が吹くのはすぐそこだ。
写真:深野輝美 (Supported by Nikon)
文:岡安いつ美