復活して以降も走り続ける彼等の雄姿
思わず弾けてしまった人も多いことだろう、THE GET UP KIDSの久々のフジロック公演。エモの代名詞ともいえるような存在で一躍ヒーローとなったが、05年の活動休止宣言が世に与えた衝撃は大きかった。しかしながら、08年に再結成。それからは世界各地を行脚していて、昨年には東名阪ツアーを敢行し、たくさんのファンに復活を大いにアピールしている。っが、こうして再びフジで彼等の雄姿を見られる日が来るとは、誰が予想できただろうか。この巡り合わせには素直に感謝を述べたいところだ。
昨年にはEP、今年には新作を自らのレーベルでリリースするという大きな挑戦に打って出た彼等だが、それらの作品では、代名詞のエモで片付けられない変化・転換が如実に伺える内容であった。それこそ新作では、エレクトロな電子音を用いながらグルーヴを重視したロックを形成していて、いつになく踏み込んでいるなあというのを聴き手に印象づけたと思う。とはいえ、それが賛否両論なのが皮肉なことではあるのだが。
ライヴではその新作からの曲と過去曲をバランスよく配置。1発目はその7 年振りとなった復活作のド頭を飾る「Tithe」からスタートし、続いてがエモの名盤のひとつとされる2ndアルバム『Something to Write Home About』からの「Action&Action」で一気に会場がスパーク。瑞々しい疾走感と情感のこもった歌声を生命線に、人々の昂揚感を煽っていく。古きと新しきを織り交ぜて起伏を造りながら、新しいTHE GET UP KIDSとしての今をつくりあげているといえるだろうか。それでもやっぱり昔の曲では、恐ろしいぐらいに客のテンションが違ってて、振りあがる拳の数やモッシュ・ダイブ等の動きも全然違う。オーディエンスとのコール&レスポンスも自然に行われ、それほどの宝物を彼等が持っている事を印象付けた。その後もバンドの熱気ある演奏につられて、会場も徐々に熱を帯びていく。
面白かったのは終盤で、なぜか、「乾杯!」とメンバー全員がコップをぶつけあいながら、和やかに乾杯する姿も見受けられた。もちろん、それを見た人々には思わず笑みが浮かびあがる。本当にいいヤツら。だからというわけでもないと思うが、その直後に演奏された大名曲の「Holiday」のギアのかかり具合が凄まじく、お祭り騒ぎのような盛り上がり。この曲聴かないと終われない!って人も多かったことだろうし、この一体感は素晴らしかった。その後のラスト2曲は、いきなり披露して度肝を抜いたBlurのカヴァー「Girls&Boys」で歌って踊らせ、「10 minutes」で一段と大きな狂騒を生みだして、50分強のライヴを終えた。
個人的にこれが彼等のライヴを見るのは初めてなので、単純に再結成以前・以降で比べる事は出来ない。だが、このステージがとても貴重な体験となったことは間違いなし。復活してまだまだ走り続けるだろう彼等にこれからも期待したい。
写真:府川展也
文:伊藤卓也