夜もふけてきた午前1時。この日は裏ではTHE MUSICが日本での最後のライブを行っていたからか、心なしかいつもより人が少ないように思えたパレス・オブ・ワンダー。メインステージのライブが終わり、3日間の疲労も頂点に達するような時間でありながらも、ここに集まるオーディエンスは本当に元気である。フジロックの終わりが見えてきていることに抵抗しているかのような風にも見える。
そんな時間帯に、この日のルーキー・ステージ3番手として登場したのが、都内で活動している3ピース・バンドSuper Spreaders(スーパースプレッダーズ)である。今年のルーキーの中では異色の存在だったように思う。大所帯のバンドや、2人組の女の子など見た目にも強烈な印象をもたらすバンドが多かったが、彼は違った。必要最低限の楽器だけが準備されたこざっぱりとしたステージ上に3人。こんなにシンプルで潔いバンドは他にはいなかった。サウンドチェックの段階から、曲をしっかりと演奏するあたりも何よりも“音”勝負な姿勢が伺える。
ライブが始りヴォーカル、飯野の少ししゃがれて、力強い歌声はダイレクトに心に響き渡る。派手なパフォーマンスこそなかったが、無骨でまっすぐな3人の勇姿は、私たちにしっかりと届いていた。激しい曲から、聞かせる曲まで、30分という短いセットの中で彼らの魅力を垣間見れたと私は思う。
彼らがメインステージに上がるとしたら……レッドマーキーなんかはより普段の彼らを見ることができるだろう。しかしこのバンドはぜひ野外で見たいと私は思う。ルーキーのステージで突き抜ける飯野の声を聞いていたらそんな風に思わずにはいられない。いつか大きいステージに立つ彼らを見ることを楽しみにしたいと思う。
写真:深野輝美 (Supported by Nikon)
文:岡安いつ美