アンコールも飛び出した、ルーキーステージの大トリバンド
全15組による熱演が繰り広げられたルーキーステージ。その大トリを飾ったのがヘルメッツだ。アコースティック・ギター片手にボーカルも務める山下と、エレキギターの大谷によるデュオで、今回はドラムのサポートメンバーが参加している。会場全体にはフジロックが終わりゆく気配が漂いはじめていたのだが、このステージの前だけは別だった。ヘルメッツTシャツを身にまとったファンが、リハーサルの段階から集まっている。祭はまだ終わらない、ここからはじまっていく。そんなポジティブな空気が流れていた。
緊張した様子を見せながらも、集まったファンの姿を見て安心したのか、壇上の彼らの表情は実に明るい。CDやTシャツを買ってほしいと冗談まじりのMCをはさみつつ、日本語をベースにした熱く激しいブルース、ロック調の歌が響いていく。なかでも最も印象深かったのは、本編の最後に演奏した「baby」だ。その名の通り新しく生まれてくる命についての歌で、サビの「ベイビー!」と歌われる部分ではオーディエンスから合唱も沸き起こる。突き上げられるこぶし、叫ばれる歌。壮大なるフィナーレへと向かっていく瞬間だった。
だが、このステージはこれで終わりではなかった。取材のためステージ裏で彼らを待っていると、奥からはバンドを呼び戻そうとするアンコールが聞こえてくる。予想もしない状況に戸惑いながらも、嬉しそうな笑みを浮かべてステージへと戻っていく山下と大谷のふたり。集まってくれたオーディエンスへ、裏方のスタッフへ、感謝の言葉を繰り返し述べて最後の歌を響かせた。結成して10年と決して若くはないルーキーバンドの歩みは、このステージをきっかけにさらに高みを目指すのだろう。次は場内で…。このステージで見た良いバンドには、そんな声をかけたくなるのだ。
写真・文:船橋岳大(Supported by NIKON)