天真爛漫とも言えるような様々な感情が見え隠れするインストバンド
「なかなか激しい音楽をやろうと思いますので、良かったら立って聴いてください」。そんな鍵盤の片木希依のかけ声から始まったのが、京都出身のジズー。ギター、ベース、鍵盤、ドラムとベーシックな4人編成のインストバンドだ。もうすでに同ステージにも出演したことがあるnabowaとも仲が良いらしく、一緒に対バンなどをよく行なっているのだとか。
ジズーの音は、ロックが持つ重さはあるが、鍵盤は曲想を奏でているし、スウィング感もあって、暗いのはちょっと…という人も聴きやすいバンドだと思う。それは音を聴いてもらえればよくわかると思うけれど、この日も彼らの存在を知らない人も多かったはずなのに、すぐに曲のテンションを理解していくような良い反応を見られた。
中盤に入ると、「アルバム『novel』を発売してツアーを回ってきたところです。また、夏のステキな時期に、こうしてステージに立てて嬉しく思います」というギターの井上典政のMCが。そこから立て続けに、アルバムの収録曲“sun”などを演奏していくのだが、いつものまったりしたジプシーアバロンとはまったく違い、気付けばハイテンションなオーディエンスばかり。ジズーのまるで心の動きを1曲の中で表すような、そして、ひたすらループ感のある音楽がそうさせているのだろう。
歌謡曲かと思えば、急にジャズっぽくなったり…時には柔らかく甘くなったりと、天真爛漫というべきか、いろんな「顔」が見えるのもこのバンドの特徴だ。最後には、オーディエンスも飛び跳ねたり、手を挙げたり、本当に初めて観た人も中にいるのかな?と疑ってしまうほど、中身の濃いライヴだった。演奏時間に関しては、少し短いような気もしたのだけど、8分目くらいがちょうどいいということだろうか。この先もライヴの予定が詰まっているようなので、そちらもぜひチェックしてほしい。
jizue
写真:近澤幸司 文:松坂 愛