アトミックカフェという文脈を考えると、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル&ギターというよりもTHE FUTURE TIMES編集長と紹介したくなる後藤正文のソロステージがアバロンフィールドでおこなわれた。
2003年のルーキーアゴーゴーにはじまり、2004年レッドマーキー、2006年、2010年のグリーンステージとステップアップしていたASIAN KUNG-FU GENERATIONはさすがの集客力でアバロンフィールドは坂の上までびっしりと観客で埋め尽くされている。アトミックカフェトークの時間が30分では話足りないなかったこと、一緒にトークセッションをおこなったヒカシューボーカル巻上公一の話がよかったことに触れ「もっと精進して行かなきゃ、と思いました」とのMCでライブはスタートした。
1曲目は震災の後に書いたという”夜を超えて”。この曲を世に出すのが怖かったと後藤は話す。直接被害を受けた訳でもない自分が、表現的な比喩だとしても「がれき」という言葉を使ってもよいのかという躊躇を率直に語る。続いて2曲目は”マーチングバンド”が演奏された。アコースティックでしっかりと歌い上げる後藤の姿から原発や社会という大きな問題に自分の立ち位置からまっすぐと向き合おうとする真摯さがにじみ出ていて、オーディエンスも食い入るように聞き入っていた。
ASIAN KUNG-FU GENERATIONドラムスの伊地知潔をサポートに向かえた(メンバーは全員フジロックに来ているとのことなのだが「みんなでやろうよと言ったら、潔しかやると言わなかった」とのこと)”All right part2 “では手拍子が起こり、いつものアジカンのムードが感じられたからかお客さんもリラックスした様子で会場の雰囲気もゆるんできた。続いてWeezerの”Surf Wax America”をカバーし、客席にも一緒に歌うようにうながしていた。残念ながらやはり歌詞がわからないとなかなか難しく、若干かみあわないところがあったのが歯がゆいところだ。
ここでアルコールが入ったとおぼしき観客がステージ上の後藤に「アジカンの曲やってよー」大声で話しかけ、結局そのまま対話するというアクシデントが発生し、話の流れから曲順が変更になって”ループ&ループ”を演奏した。席とステージにほとんど境がないニューパワーギアステージならではの出来事だったが、少しも嫌な顔をせずに当たり前のように会話する後藤の姿が印象的である。
続いて演奏された9月に発売になるアルバムより披露された新曲は満場一致の大合唱となり、ひとりに戻った後藤が最後に演奏したのは”ソラニン”。後藤ののびやかな歌声とギターと満員の歓声がアバロンフィールドに響き渡っていた。
アトミック・カフェ【後藤正文】
写真:近澤幸司 文:永田夏来