キュートな見た目とは裏腹に中毒性のあるステージング
陽気な音楽に合わせて登場したヤシの木帽子を被った女性3名…見た感じ女子と言った方がいいだろうか。ヴォーカル&ギターの中嶋イッキュウ、ギター&コーラスのキダ モティフォ、ベース&コーラスのヒロミ・ヒロヒロという女子3名と、ドラムのkomaki♂のみ男性からなるトリコがジプシーアバロンの大トリとして姿を見せる。が、陽気だったのは、この時だけで、“G.N.S”、“夢見がちな少女、舞い上がる、空へ”と進むと、さっきとは打って変わって、顔色が変わったかのように、音に入り込み激しく身体を揺れ動かしていく。ものすごく正確に演奏するという感じではないのだけど、とにかく今思ったそのままの心情を音に乗せるのが人一倍上手い。
バンドのプロフィールの全貌が明らかにされていない分、年齢なども定かではないのだけど、大人と子どもの狭間であろうと思われる言葉の数々が。1つのバンドの中で、その2つが存在し、融合されているのが珍しくもあり、目を惹く部分である。“爆裂パニエ”では、もうそのタイトル通りに爆裂…。スピーカーの前に乗り出したり頭を振り乱したり、ガールズの強さというか、パワーを見せられたような気がした。そして、また数曲演奏したあと、良きタイミングで観客から「カッコいい」との声が。
すると、関西弁で「カッコいいやろ。その次のやつもカッコいからな。京都のレディオヘッドです、よろしく」なんて、茶目っ気たっぷりの返事を。また面白いのが、そのMC後に披露した楽曲の演奏が終わると、「どうだ!」とか、レディオヘッドを観に行こうとする観客に向けて「去り際がカッコいいからな、うちらは」とか、自信たっぷりのMCを連発していくところ。もうガールズ・トークばりに、女子3人で次々と話を進めていくのだが、強気なだけのことはあるというか、1曲目から度肝を抜かれっぱなしなくらい、はちゃめちゃなステージがどんどんクセになってくるのだ。
次いで、どちらかと言うと幻想的で、曲の中盤くらいまではゆったりした楽曲を。もうすっかり日が落ちていた分、ステージ内も暗くなっており、この幻想的な感じがまた妙に合う。で、問題はラスト。ヒロミ・ヒロヒロはドラムの上に乗り上がり、中嶋イッキュウはギターを降ろしてステージ内を無造作に歩きまわり…そして、キダ モティフォはステージを降りて、オーディエンスのところへ。そのまま観客に持ち上げられ、いわゆるダイヴ状態。その中でもkomaki♂はまだ平常心を保っている分、軸がブレることはないが、まさか、ジプシーアバロンでこんな光景が観られるとは…。しかも、楽曲自体中毒性が高いし、これは確実に口コミでも広がっていくのではないだろうか。終わったあとも、拍手と同時に「カッコいい」という観客の声はなかなか鳴り止むことはなかった。できることなら、頻繁に関東方面でもライヴをやってもらいたいものだ。