スタート、より力強く
バラードのような始まりから疾走のビートがなだれ、同時にオーディエンスもハジけた1曲目は”Survive”。別ステージ方面からこちらめがけて急ぎ足という人も徐々に増えているようだ。
最良のスタートダッシュをキメて、そのままノンストップで2曲3曲と続く。上を見あげればホワイトステージならではの砂埃、横を見ればダイブの準備を始めるキッズが…といった具合だ。そしてこのギラギラの日差しだもんね、と思っているとベース&ボーカルの木下正行も「2年ぶりのフジ、4年ぶりのホワイトステージです。派手にいくぞ!!」とゲキを飛ばす。いきますとも!
そんな流れで、木下の「最高の50分にしようぜ」という発言を正しく守る形でステージが進行していく。中盤の”Time After Time”のカバーという大ネタも、初期の名曲”Voyage”もホワイトステージの出音の良さの中、イキのいい低音に跳ねる縦ノリとしてオーディエンスをことごとくキッズに変えていった。
そんなひたすらに続くと思われたわんぱくな時間に「転」の展開が入った。木下のこんなMCだ。
「俺は、30歳超えて思うところ、できごとがあった。あの震災だって、あんなこと誰も予想してなかったと思う…だから、そんな今は、元気を届けたいと思います。腹から出る笑顔を見せてくれ!」
そして披露されたのが、次回作タイトル曲の”ONE”。それは、木下の声ごと音調を力でひねり上げるような性質を持った曲だった。続く曲”reason”とともに、パンクロック本来のパワーに日本人のメロディーセンスを組み合わせたものとして、10月の発売にはまたファンに愛される作品となるだろう。願わくは、元気や笑顔を求める人達に届いてほしいと思える曲だった。
50分を締めたのは、文字通りな歌詞を持つ”Start”が選ばれた。演奏前に「頼っていいから、必死に生きようぜ」というメッセージを与えた木下の言葉を鵜呑みに、キッズは前向きさを彼らの歌に借りてフィナーレを全力で体感。その内のひとりが「少しでも伝われば」などと思いながら、持ち帰った興奮をここにいま書いている次第である。