リアル!俺たちハタチ族
そしてフジロッカ―にとってのお正月、年に一度のお祭りも終わりに差しかかっていた。フジロック最終日、グリーンステージにはヘッドライナーのRADIOHEAD(レディオヘッド)が登場し、いよいよ祭りも最後の打ち上がりを見せている。真夜中に出現する大人の不思議な遊園地、場外エリアのパレス・オブ・ワンダーも、最後の盛り上がりを見せている。
そんなパレスの一角に、オーディション形式で選ばれたアーティストに提供される登竜門的ステージ、ルーキー・ア・ゴーゴーはある。毎年このステージでは、夜な夜な原石バンドがライヴを繰り広げ、その後メインステージ出演へと成長していったバンドも少なくない。そんな羽化前夜…「伸びしろ」や可能性を感じさせるバンドのライヴに立ち会える、レアなステージだ。
しかしちょっと待て。「羽化前夜」とは書いたけれど。なんと次に登場する「アップル斎藤と愉快なヘラクレスたち」、メンバー全員なんと現在年齢20歳だそうである。…まじか…!
「どうも!栃木県宇都宮市からやって参りました、アップル斎藤と愉快なヘラクレスたちと申します、よろしく!」。ルーキー中のルーキーバンドのライヴは、脳震盪を起こしそうなデカイ音で始まった。一曲目は”Hey!Ho!アップル”(ビートルズ愛ゆえのネーミングでアップルなんだそうだ)。パンク要素たっぷりの爆音のロックンロールが、フジロック三日目の疲れと眠気を気持ち良く覚醒させてくれる。若さの特権とも言えそうなアッパーなライヴを見せてくれているのは、ステージ上でジャンプしまくりのギター&ボーカルのわたーんに、ギターとうたとロマンスの神様(←公称)の篠崎あると、ベースとうたとジャスティス(←公称)のOH-!NUKi、ドラムと地獄へのおくりびと(←公称だってば)のアップル斎藤の四人。ちなみに、栃木県愛をアピールするだけあって、ベースのOH-!NUKiが来ているTシャツは、栃木SC(サッカークラブ)のだったりする。
ピュア過ぎるほどにロックンロール愛をあふれさせてしまうステージは、演奏される曲名も、まさに”ロックンロール”だったり、”回したレコード止まらない”だったり。やんちゃぶりもルーキーらしく、ボーカルのわたーんがギターを放り投げて踊りまくってたり、ベースのOH-!NUKiがギターの篠崎を肩車しちゃったり。とにかく「カワイイヤツ」全開である。お客さんも精鋭揃いといった感じで、ボーカルのわたーんがステージを飛び降りると、客席からはもうもうと土ぼこりが上がるほどの熱狂ぶり。ふとそんな時ステージ上を見れば、足を開きすきてこけるベースのOH-!NUKiがいるのだった…なんでそんなに、やることなすことカワイイんだ!
ライヴ中、盛り上がるお客さんに対して、「間違えてないですか?”Creep”(←RADIOHEAD)とかやらないですよ?」なんて言っていたけれど、彼らのステージも最高の楽しさだったのだ。うん、グリーンステージよりも、断然ルーキーステージ推しなライヴだったのだ。
アップル斎藤と愉快なヘラクレスたち
写真:岡村直昭/文:小田葉子