SIGUR RÓS
美しき轟音が苗場に帰還!
さすがにTシャツで過ごすには困難な気温まで落ちてきた夜のグリーン・ステージ。今年最初のヘッドライナーを務めるのはアイスランド代表シガー・ロス。フジロックに参加するのは2回目。前回は05年に、つまり今から11年前にホワイト・ステージのトリ務めていたのだ。彼らのライブは視覚的にも楽しませてくれる仕掛けが特徴で05年はステージの前に幕を貼ってステージ側から照明を当てて巨大な影を浮かび上がらせるものだった。今回はいったいどんなライブをしてくれるのか楽しみでしょうがない。
少し肌寒い中、モニターが付いてるステージの前でところ狭しと待っていると、定刻にモニターが暗転する。すると一気に歓声があがる。ステージに明かりが灯されるとともに一曲目の”Óveður”が流れる。シガー・ロスのステージの始まりだ。会場の横にある二台のモニター越しに観ないとうまく見えづらい。一体何で見づらいのかというとステージ上にブラインド状のものがあり、その奥で三人が演奏しているのだ。ブラインド越しにうっすらとヨンシーが弓を引いてるのが見える。彼の演奏はエレキギターをバイオリンのように弓で引いて演奏する。両サイドの画面はモノクロで彼らを映し出す。この両サイドのモニターとステージ後ろのモニターが今回のシガー・ロスのライブの視覚的な表現の上で非常に効果的な役割果たしていた。三曲目が始まる前に見えづらい原因であったブラインドが上がり、メンバーがはっきり見えるようになる。するとそこからは曲とメンバーの動きとモニターの映像表現で圧倒的な美を演出し始める。近くの観客が口々に「すごい!」「綺麗!」と声をあげていた。両サイドのモニターに赤い線の集合体のようなものが映る。よく見るとそれはメンバーのようで、体の輪郭や楽器の輪郭だけが線となって赤く光り、リアルタイムの動きと連動しているのだ。ステージ上のメンバーと合わせてみると、とんでもない迫力だ。彼らのワンマンというわけではないフジロックでもここまでの表現ができるのは驚きだ。
そしてもうひとつ驚きが、メンバー3人でライブを行っているということだ。過去にはメンバーがもう一人いたり、サポートメンバーがいたりと人数が多かったので納得だが今回はほぼ三人で表現しきっている。おそらくサンプリングを再生してる部分もあったと思われるが基本的には三人の音がメインのようだった。それでも物足りなさを感じることなく、むしろ新鮮ささえ感じるシガー・ロス。05年のセットリストにあったものを今回も演奏しているが、若干のアレンジの違いがあった部分があった。もちろん逆に変わらない部分もある。11年という歳月の中で洗練されていっているのだ。そういうバンドだからこそのこの11年の間にワールドクラスのバンドへと、他国のフェスのヘッドライナーに抜擢されるようなバンドへと成長できたのだと思う。
そのようなことを考えながら眺めているともう最後の曲だ。シガー・ロスのライブの締めくくりといえばこの曲。05年もそうだった。最後の曲は’”popplagið”だ。ためにためてからの鬼気迫るかのような爆発。シガー・ロスの根幹の部分は変わっていないように思えた。
最後はモニターに大きくtakkと表示された。アイスランド語で『ありがとう』という意味だ。メンバー3人がステージ前方まで出てきて挨拶して帰ったのだが、アンコール待ちの拍手が鳴り止まない。するともう一度3人が出てきて挨拶。アンコールは無いのだ。これがシガー・ロスなのだ。まだもっと観たい。だから是非再び苗場のステージに戻ってきて欲しいものだ。
セットリスト(原文のまま)
01.Óveður
02.Starálfur
03.Sæglópur
04.Glósóli
05.Vaka
06.Ný Batterí
07.E-bow
08.Festival
09.Yfirborð
10.Kveikur
11.Hafsól
12.Popplagið