TRAIN
ベテランなステージングで聴かせたメロディー重視のポップロック
曇り空のホワイトステージ午後13:00。じんわりと暑さを感じる天気だが、風が吹くと涼しくて気持ちがいい。80s、90sのヒップホップがSEで流れるなか、ステージ前には続々と人が集まってきた。お目当てはまもなく登場するアメリカのポップロック・バンド、トレインだ。3度のグラミー賞受賞経験を持つベテランで、2017年は1月に最新アルバム『A Girl, a Bottle, a Boat』をリリースし、その安定したメロディーメイカーっぷりを見せつけたばかり。今回は初めてのフジロック参戦となる。
SEが途切れると汽笛の音が聞こえてきた。トレインがやってくる合図だ!シュッシュッと汽車が動きだす音をバックに、黒い服で統一したバンドメンバーたちが登場した。バンドセットを挟んで両サイドにはバックコーラスの女性2人が立つ。ボーカルのパット・モナハンが現れると一際歓声が大きくなり、最新アルバムからのヒット曲”Drink Up”からステージがスタートした。サビの部分では観客から手が上がり、初っ端から会場の盛り上がりの上々だ。続けて”50 Ways To Say Goodbye”を演奏し、疾走感のあるポップロックに手拍子が上がる。3曲目では一転トーンダウンして”Meet Virginia”。トレインが有名になるきっかけとなった1999年の名曲だ。当時を知る者としては思わずセンチメンタルな気持ちになるが、バンドはそんな隙を与えない。ギタリストのルイス・マルドナドがブレイクで熱いギターソロを披露している間、パットがステージ脇に消えたかと思うと「Drink Up」と書かれたバンドTシャツを着て戻ってきた。パットが「こんな最高のギターソロをする奴はもうアメリカにはいないんだぜ」と観客を煽り、さらにロックなギターソロを続けるルイス。するとパットが今度は「タダのTシャツももうアメリカにはないんだぜ」と言ったかと思うと、手元に丸めてあったTシャツを何枚か観客に投げ始めた!飛んでくるTシャツをキャッチしようと、観客が手を伸ばしながらステージ前に押し寄せる、押し寄せる。さらにパットは自分が着ていたTシャツにペンでサインし、メンバー全員にもサインさせてから脱いでそれも観客に投げちゃうという熱いファンサービスでがっちり観客の心をつかんだ。その後もサビで合唱が起こった”Mermaid”、あたたかみのあるメロディーで聞かせる”Play That Song”、活動停止後の2009年にカムバックを決定付けたグラミー賞受賞曲”Hey, Soul Sister”で、ホワイトステージを沸かせたトレイン。途中エド・シーランの”Shape Of You”やシーアの”Cheap Thrills”のカバーをサラッとメドレーでプレイしてから”Lost And Found”へつなげ、キャッチーな”Drive By”で最大の盛り上がりを見せてからトレイン最大のヒット曲”Drops Of Jupiter”でステージを締めくくった。
トレインは、観客をしっかり盛り上げ続けるステージングがさすがのベテランだった。最先端のトレンドを追うのではなく、メロディー重視のポップロックを追い求める姿勢のブレなさもまたこれだけ長い間ファンに支持される要因なのだろう。楽しいライブを見た後の常らしく、爽快な気持ちでホワイトステージを後にした。