EDEN
雨の音すらも操る、若干21歳の若きシンガー
現段階でリリースされているのは、EP『I think you think too much』の、たった1枚のみ。にも関わらず、レッドマーキー内は、大勢の人で充満している。来日したのは今回が初めてだったけれど、会場に集まった人数から高い期待値を得られているのがよく分かる。
湿度が高く、汗が肌に纏わりつくような空気感だった。演奏が始まった直後に大雨が降りだしたので、その前兆なのかもしれない。
大歓声が起きる中、18分押しで登場したのはEDENことジョナサン・ウンだ。頭に巻かれたねじり鉢巻きの上から、ヘッドフォンをしている。なんだか少し恥ずかしそうにも見える。その姿を見ていると、やはり21歳の青年らしくて、微笑ましく思えてしまう。
白く、眩しい照明と共に、うち叩くようにジョナサンが鍵盤を弾く。“and”だった。そして、リードシングルである“sex”へと繋げられていく。
この時くらいから、びっくりするくらいの大雨が降り始め、屋根のあるレッドマーキー内へと更に大勢の人が駆け込んできた。EDENの楽曲どちらかと言えば、暗くて静かなイメージが強い。雨がとてもよく似合うのだ。ジョナサンは、エレクトロポップにヘヴィーなギターサウンドを混ざり合わせた斬新な楽曲の全てを、たった一人で演奏している。キーボードにシンセ、ギターのサウンド。これらの音の要素に雨音も加わったように終始聴こえた。
“drugs”と“Nocturne”では、どっしりと重厚感たっぷりな曲に無機質なジョナサンの裏声が乗せられている。先ほど手を挙げ、コール&レスポンスをしていた観客達も、静かにステージに魅入っているのがよくわかる。盛り上げるだけではなくて、きちんと聴かせるところは聴かせる。スクリーンに映し出された映像もあり、ライブという表現の中で強弱が付けられていて、視覚的にも聴覚的にも飽きが来ず、楽しめていた。
正直なところ、EPも1枚しかリリースしておらず、1時間演奏できるほどの楽曲があるのだろうか、というのが個人的には心配な要素ではあった。そんな中、マイケルジャクソンの“Billie Jean”と、OUTKASTの“hey ya”の2曲のカヴァーが披露される。スローリーなテンポでありながら、しっとりと歌い上げ、EDENらしさを取り入れている。カヴァーした楽曲からも、彼の音楽性の守備範囲の広さというか、ミクスチャーな音楽を作るに至った経緯みたいなものが垣間見れたような気がした。
最後は「Thank you so much Fujirock!」というMCと共に、“rock+roll”の切なげなイントロが鳴る。どの曲もそうなのだけれど、重いサウンドとブレイクが気持ちよく、心の底からワクワクしてしまう。
雨のせいもあり、常に人で埋め尽くされたレッドマーキー。期待値以上の演奏に応えるかの如く大きな拍手が送られた。EDENがステージを去り、苗場は水浸し、泥だらけ状態。その直後には、雨もちゃっかり止んでいるんだから不思議だ。雨の音すらも操っているようだった。