GALLANT
才能の塊インザハウス!
大雨がひとしきり降った後のレッドマーキーは、むっとする熱気に包まれていた。2014年にEP『Zebra』で登場して以来、「R&Bの流れを変えるアーティスト」と高い評価を受けている新鋭シンガー、ガラントがフジロックに初出演するのだ。大勢の観客がステージ前に集まっていて、サウンドチェックの時間から歓声が上がるあたり期待値の高さが感じられた。
10分遅れでバックバンドのメンバーがステージに現れ、幻想的なサウンドがレッドマーキーを満たし始めた。ガラントことクリストファー・ガラントは黒いダメージデニムに黒いキャップ、カラシ色のニットというおしゃれな出で立ちで登場 。1曲目はグラミー賞にノミネートされた1stアルバム『Ology』から”Open Up”だった。のっけからあまりのファルセットの美しさに鳥肌が立つ。うまく言葉にできないけれど、ものすごい才能を目の当たりにした瞬間にしか感じることができない圧迫感というか。観客もガラントの歌声が放つ迫力に圧倒されていたのだと思う。”Open Up”が終わると、まだ1曲目とは思えないほど、どよめくような歓喜の声が湧き上がっていた。そのまま小鳥のさえずりがバッグに入った”Jupiter Grayscale”へと続け、甘美なR&Bを響かせる。高音ファルセットやシャウトをするたびに歓声が上がった。ガラントは歌い終えると上手な日本語で「ありがとうございました」と感謝の気持ちを述べ、続けて「子供の時、日本が大好きでした。子供の時は日本に住むのが夢でした」とたどたどしく話し、観客を沸かせた。ガラントはライヴ中ずっと可愛い日本語MCで通していて、がんばって日本語を練習した姿を考えるとグッときた。彼の日本への愛は6曲目にプレイした、宮崎駿にインスパイアされた”Miyazaki”からも明らかだ。
時にファンクネスを感じさせるグルーヴを出しつつ、甘美なるネクストレベルなR&Bにすっかり引き込まれてしまう。とにかく美しくて、スムースで、気持ちが良すぎた。バッグバンドとガラントの間に生じるケミストリーもマジカルだった。ジェネイ・アイコとのデュエット”Skipping Stones”を、キーボードを弾いていたバンドメンバーのダニーとパフォーマンスしたのもハイライトのひとつだろう。ガラントはよろけるような動きでバタバタと腕を動かし、ステージの上を動き回る。独特な体の動きで音楽を体現していた。「ここに戻ってくるのが夢です」そう話して、ラストにプレイしたのはデビュー曲”Weight In Gold”。しっとりとファルセットを聴かせた後は、観客に触れられるほど近くまで降りてきてステージ前の興奮は最高潮に! ガラントとレッドマーキーが大合唱して圧巻のライヴが終了した。
真に類いまれな、才能の塊のようなアーティストだった。素晴らしいパフォーマンスに圧倒された観客が続出したせいか、ガラントはなんとツイッターのトレンド入りまで果たしていた。トリでもないのに凄すぎる。フジロック1日目もまだ夕方前だというのにベストアクトを見てしまったかもしれない。