LIVE REPORT FIELD OF HEAVEN 7/28 FRI

FATHER JOHN MISTY

ジョシュ・ティルマンという名の表現者

個人的に、今年のフジロックで最も重要なアクト、絶対に見ておかなければ行けないと思ったアクトが、このファーザー・ジョン・ミスティことジョシュ・ティルマンだ。彼はアメリカのフォーク・ロックバンド、フリート・フォクシーズの元ドラマーで、2012年1月東京での単独公演を最後にバンドを脱退。同年、”ファーザー・ジョン・ミスティ”名義で今年初めの時点で二枚のアルバムをリリース。特にセカンドアルバム『I Love You, Honeybear』は「愛がもたらす喜びと苦悩」「混沌とした社会への怒り」について歌っているアルバムで、海外のあらゆる音楽メディアで大絶賛を浴びた。そして、今年4月には待望のサードアルバム『Pure Comedy』をリリース。満を辞して初来日、フジロック初参戦である。

18時オンタイム、“Pure Comedy”からスタートした彼のステージは、終始ジョシュのパフォーマンス力の高さに圧倒される約1時間となった。曲中曲間と常に喜怒哀楽を体いっぱいを使って表現するジョシュの姿に、彼のアーティストとして表現者としてのポテンシャルの高さを感じずにはいられなかった。さらに楽曲に関しても、”Total Entertainment Forever”の中盤からラストにかけての高揚感であったり、”Strange Encounter”のサビにかけて心張り裂けそうになるエモーショナルさであったり、とてもドラマティック。中盤は、緩やかなメロディラインがあるポップ・フォーク・ソング“Chateau Lobby #4 (in C for Two Virgins)”や、フォーク・エレクトロニカにサイケが感じられる“True Affection”などと続き、至高の終盤への続いていく。

ラスト3曲はもうファンのためとしか思えない最高の3曲で終演へと向かっていく。彼の出世曲である“I Love You, Honeybear”では感極まるファンからシンガロングが発生し、ブルース・スプリングスティーンの“Born in the U.S.A.”をもじったと言わる“Bored in the USA”ではそのシニカルな歌詞のバックに流れる笑い声のサンプリングに合わせてファンも笑い声を上げ、ラストの“Holy Shit”のシンプルなフォーク・ギターとピアノから鳴る甘いメロディのバラード・ソングに心揺さぶられ、正味1時間の短いステージではあったものの大団円で終えた。

ジョシュはインタビューでこう語っている。「音楽の全ては自由なんだ。」と。愛や失望、そして哀しみついての歌詞を書くことも、人の心を揺さぶるような曲を作ることも、ライヴ会場でファンの前でエモーショナルに満ちたパフォーマンスすることも、全てにおいて、彼は心から楽しんでいる。そのことが120%伝わってくる、素敵で美しいライヴだった。

<セットリスト>
Pure Comedy
Total Entertainment Forever
Before the Revolution
Ballad of the Dying Man
Strange Encounter
Chateau Lobby #4 (in C for Two Virgins)
Nancy From Now On
True Affection
Birdie
Hollywood Forever Cemetery Sings
I Love You, Honeybear
Bored in the USA
Holy Shit

 Photo by 古川喜隆  Text by 若林 修平 Posted on 2017.7.28 18:10