CHAI
ヤバいオンナバンド、苗場の深夜を掌握
いわゆる“小バコ”サイズのコンパクトなルーキーアゴーゴーのステージに対し、位置的に姿は見えないだろう角度のところまで人、人、人の超満員。異様に高い期待がたちこめる中、上下ピンクの衣装&白スニーカー姿でキメたCHAIの4人がはつらつと登場し、開始から間もなくその場の雰囲気を自分たちのカラーに染めた。
マナ(Vo, Key)とカナ(Vo, G)は「ヴィレヴァンの」などキッチュなサウンドのナンバーに軽やかな声を乗せる。かと思えば続く演目では、テイラー・スウィフト「Shake It Off」のメロで勝手な歌詞をカブせて最新作「ほめごろシリーズ」のジャケットが描かれたパネルを手にダンスして“宣伝”。そんなパフォーマンスを硬質なリズムで支えたユウキ(Ba)とユナ(Dr)も、The Beatles「Yesterday」のアカペラカバーでは楽器から離れて息の合ったダンスを披露する。ポップの一言で言い尽くせない、コンテンツ力の高いパフォーマンスがテンポよく続いた。
軽妙なノリのショウに歓声を上げるオーディエンスへ、マナは笑顔を見せ「いまのNEOかわいかったよねフジロック!」と確認する。そんなパフォーマンスの面白さと楽曲の楽しさを両立させるのは彼女たちの確かな演奏力。和英同時通訳MCのあとぶつけられた「ボーイズ・セコ・メン」では“セコいオトコ”へ抱く気持ちを質実剛健なロックサウンドを展開し、続く16ビートのダンスチューン「クールクールビジョン」ではユウキがキーボードにパートチェンジして鋭いシンセ音を放つ。何が起こるかわからない展開とアウトプットの完成度の高さはもちろん、ステージ上で花開く“カワイイ”にオーディエンスはいちいち魅了するしかなかった。
ラストはメロウなトロピカルチューン「Sayonara Complex」。マナはディスコビートに乗せて「カワイイだけの私じゃつまらない」と歌う。そしてパフォーマンスを終え、ブルーのライトに映えるピンク色の4人はしっかりとお辞儀をして退出。終演後はそこかしこで大絶賛の声が聞こえる。期待の新人は30分かけてじっくりとオーディエンスの心をわしづかみにしたのだった。