Rei
森をうねらすブルーズ
グリーン・ステージではグループ魂が初っ端からご機嫌に下ネタを連発し、ホワイトのドクトル・プラッツは、昨晩の前夜祭に続く盛り上がりを見せている。フジロックが始まったお祭り感が会場全体を包む中、木道亭の一発目に登場するのは、24歳のシンガー・ソング・ライター、Reiだ。海外育ちで、幼少期から洋楽に触れ、小学生の頃には曲作りを始めたという経歴を持つ。また、クラシックギターのプロを目指したこともあるという、超絶テクニックを操るギタリストでもある。そんな規格外なエピソードも手伝ってか、木道亭は15分前にはもうびっしりで、期待の高さがうかがえた。
定刻通り登場したReiが、小さな体で抱えたアコースティック・ギターを爪弾き、歌い始めるとたちまち彼女が愛するブルーズの世界へと引き込まれた。ねちっこく、グルーヴィーなそのサウンドは誰もが容易に「本物」だということがわかるもので、観客は息を飲んで彼女の姿を見つめる。
しばし緊張感のある演奏が続いたかと思うと、今度ははにかむような笑顔を覗かせる。青い花柄のワンピースにベレー帽というキュートな出で立ちでギターを抱えながらちょこまかとダンスし、シャウトするReiはとてもチャーミングだ。MCでは、「一緒に音楽を楽しめて嬉しいです。ありがとうございます。」と真摯に語りかける姿に、観客から温かな笑みがこぼれた。見守りたくなるような、妹的な可愛らしさを併せ持つ彼女に、最前列でおじさまがノリノリなのにも妙に納得だし、図らずとも誰もが魅了されてしまうだろう。
そして、自身のルーツとするブルーズやクラシカルなロックに、独自のポップセンスを加え、英語詞と日本語詞が小気味好く混ざり合いながらリズミカルに放たれる、らしさ全開の楽曲“COCOA”が放たれると、会場のボルテージはますます上がった。気が付けば、案の定ボードウォークの渋滞が起こる中、ラストに演奏された“BLACK BANANA”でのベース、ドラムとのジャムは、やり合い、刻み合い、音の応酬で、見ているこちらは呼吸困難に陥りそうなほどの迫力だった。この森の木の根っこまでがうねっているのではないかと錯覚するようなグルーヴに包まれ、最高潮の盛り上がりを見せて終演すると、名残惜しいように拍手はなかなか鳴り止まなかった。
「たまたま通りかかって度肝抜かれた。」「眠気が一気に吹っ飛んだ。」こんな言葉があちこちに飛び交っていた。Reiの膨大なエネルギーを鳴らし切るには、木道亭ではキャパオーバーであろう。彼女のさらなる活躍に思いを馳せ、またフジロックで出会えることを願う。