LIVE REPORT GREEN STAGE 7/29 SAT

Cocco

デビュー20周年を迎えたCoccoが、フジロックに初登場。ベスト盤の発売、武道館公演と、アニバーサリーイヤーとしての活動を行うなかのフジロック。しかも、グリーンステージと大舞台。もしかしたら、いや、おそらくは彼女の歌を新旧ラインナップで楽しめる絶好の機会である。そんなことを皆思っていたのだろうか、ドロドロの足元もなんのその、ステージ前方にどんどんと人が押し寄せてきている。天気は雨だが、ちょっと強いくらいの霧雨。降るなら、これくらいがちょうどいいかもしれない。

さて開演。ステージには法被を着たバンド・メンバーが次々と登場し、位置につく。先日の武道館公演で使われたものだろうか、袖元には「武道館」と書いてある。そしてメンバ―を追って、Coccoが登場。白いドレスをまとい、手には花束。それをアンプの間に置いたら、“けもの道”が始まる。なんと不思議なことだろうか、その音が始まった瞬間から、涙が止まらなかった。圧倒的な音厚、彼女の存在感、目には見えない力が、心を大きく揺さぶって離さない。ひとつひとつの声が彼女の全身から、体の底から生まれてくる。また、殺気のある表情でこちらに迫る“カウントダウン”は鳥肌ものだったし、かといえば“音速パンチ”の冒頭でぱっと曇りのない笑顔を見せるなど、彼女が見せる繊細な表情も、曲の奥行きをぐっと広げていた。

ライヴならではのギターアレンジが嬉しい“強く儚い者たち”、雨の中の“Raining”。沖縄の風を吹かした“絹ずれ”を沖縄の島言葉verで歌い上げてからの、“ジュゴンの見える丘”など、名曲を連発!周囲から「やべえ、やべえよ…!」というざわつきが聞こえるのも納得だ。そして、イントロとともに歓声が沸き起こった“焼け野が原”から、“Way Out”と続き、フィナーレは“有終の美”。

彼女のライヴはMCも演出も控えめだけど、シンプルに見せるからこそ際立つ彼女の魅力。何も隠さず、飾らず、Coccoは真正面からオーディエンスに向き合っていて、オーディエンスもまた、彼女の魅力をどストレートに受け止めていたと思う。20周年おめでとう。そして、こんなに素晴らしい日をありがとう。

 Photo by 安江正実  Text by  fujirockers.org Posted on 2017.7.29 14:50