LIVE REPORT GREEN STAGE 7/29 SAT

THE AVALANCHES

小さな旋律の先にある万華鏡のきらめき

オーストラリアの出身のサンプリング狂集団、ジ・アヴァランチーズ。2000年にリリースされたファーストアルバム『Since I Left You』は、3,500枚以上のレコードから900曲以上の曲をサンプリングして組み上げた2000年代を代表する大傑作である。そんな彼らが、『Since I Left You』リリースから16年の時を経て、去年のフジロックでライヴセットとしては初のパフォーマンスを見れる・・・はずだったのだが、メンバーの急病によりキャンセル。そのリベンジ参戦となる今年はグリーン・ステージに登場だ。

あいにくの雨だが、グリーンには多くのお客さんが集まっている。中には、おそらくコーネリアス待ちの人やエイフェックス・ツイン待ちの人も多くいるとは思うが、我らがジ・アヴァランチーズがアウェーの空気に飲み込まれるわけがないという変な自信を抱きつつ、開演時間を迎えた。イントロ・ミュージックをバックに、メンバーが登場する。メンバー構成は、ジ・アヴァランチーズのメンバーである、ロビー・チェイター(Gt/Key/Dr)とトニー・ディ・ブラシ(Key/Sy/Vo/Pro)に、ツアーメンバーの女性シンガー、男性ラッパー、女性ドラマーの5人編成。

1曲目は、新作『Wildflower』から“Because I’m Me”。始めイントロのサンプリングのボリュームが小さめで、それに対する女性ヴォーカルのマイクのボリュームとのバランス感が明らかにズレていて、ちょっと心配になったが、それはすぐに払拭される。イントロが終わった瞬間、音が爆音レベルに上がり「やっぱりライヴはすげぇな!」と思わせるに十分のインパクトがあった。続いては同じく新作から“Frankie Sinatra”。アメリカのラッパー、ダニー・ブラウンをフィーチャーしたこの曲は、アップテンポながらもどこか牧歌的なオリジナル音源の雰囲気を保ちつつ、ぶっとい重低音が引き続き鳴り響く。この後、ファーストアルバムとセカンドアルバムの曲を満遍なくプレイしつつ、その間にはアメリカのヒップホップ・グループ、スパンク・ロックのカヴァーや、ザ・フーのマッシュアップなどを挟みながら、オーディエンスを全く飽きさせることがない流れを作り上げていく。オリジナル音源を一回解体し、新たにライヴ用として再構築された各楽曲は、グリーン・ステージという広大なダンス・フロアーにいる全ての人を踊らせるぐらいスケールアップしていた。

そしてラスト、僕らが大好きだった、あの名曲“Since I Left You”がグリーンに鳴り響いた瞬間、この曲を初めて聞いた時の感動を思い出した。“Since I Left You”は間違いなく、今世紀を代表するダンス・ナンバーの内の1曲であり続けると思う。それはこの曲の持つ楽しさ、温かさ、少しの切なさが、まるで万華鏡のように回転し煌めいているから。その美しさに昔も現在も僕らは心を撃ち抜かれているのだ。

<セットリスト>
intro music – Guns ’N Roses(dark stage)
Because I’m Me
Frankie Sinatra / The Guns of Brixton(The Clash cover)
Fright Tonight / Radio
Subways / The Noise Eater(Remix) / Bump(Spank Rock cover)
Frontier Psychiatrist / Bank / Beach Boys / My Generation(The Who mashup)
If I Was a Folkstar
The Noise Eater
Since I Left You

 Photo by 古川喜隆  Text by 若林 修平 Posted on 2017.7.29 16:50