LIVE REPORT RED MARQUEE 7/29 SAT

THE LEMON TWIGS

稀代の天才兄弟、現る

一向に雨が止む様子を見せない夕刻の苗場。唯一屋根があるステージのレッドマーキーは次のアクトが始まる前から超満員だった。でも雨宿り客でいっぱいだった、という印象ではない。それは次に登場するバンドへの期待値の高さゆえだったと思う。現に観客フロア脇にある関係者エリアも、ステージに注目する人々でいつになく人口密度が高かった。レッドマーキーにまもなく登場するザ・レモン・ツイッグスは、まだ10代ながら鮮烈な才能を放つNY発の兄弟ロック・デュオだ。2016年に発表したデビューアルバム『Do Hollywood』が絶賛され、各音楽メディアでベストアルバムに選ばれるなど高い評価を受けた。2回目の来日ライヴでフジロック初出場。ステージにはダダリオ兄弟の他に、キーボードのダニー・アヤラ、ギターのミーガンら2人のバックミュージシャンがサポートメンバーとして持ち場についた。

“I Wanna Prove To You”でライヴが始まった。青い上下の衣装に身を包んだブライアンがギターを弾きながら熱唱し、上半身裸の弟マイケルはドラムを叩きながらハーモニーを乗せる。レッドマーキーが大歓声に包まれるなか、言葉を失ってしまった。いや、なんという才能なんだ、この2人は。この兄弟はマルチインストゥルメンタリストな上に、歌も抜群にうまいし、その上作り出す音楽といったら、60s、70sのロックそのままなのだ。というか、この若さにしてすでにクラシック感を体現できてしまっているのだ。なんかもの凄いアーティストを見に来てしまったぞ。この第一印象は”Why Didn’t You Say That?””Frank”とライヴが進行するにつれ、確信へと変わった。真に素晴らしいライヴを見ているかどうかは、オーディエンスの歓声を聞いただけで分かることがある。心底ぶっ飛ばされて感動している人々の歓声には、まごうことなき感嘆が聞こえるからだ。

耽美なハーモニーが印象的な”These Words”の後は、ブライアンがキーボードに移って”How Lucky Am I”を演奏し、マイケルとダニーがステージ中央のマイクに向かってハモる。お次はブライアンがドラムへ移り、マイケルが中央でギターを弾きながら”Night Song””Baby, Baby”をパフォーマンスした。優等生っぽさを感じるのがブライアンなら、ワイルドなやんちゃさを感じさせるのがマイケルだ。上半身裸にデニムでロン毛を振り乱しながら全身で歌い、ハイキックやジャンプをみせる姿はまさにロックスターそのものだった。ジョン・プライン”Fish And Whistle”、ロッキー・エリックソン”I Walked With A Zombie”などのカバー曲を挟み、最後は「帰ったらレコーディングする予定の新曲だよ」と曲紹介をして”Queen Of My School”をプレイ。ブライアンは激しくギターをかき鳴らしながら、ステージ前方で特大のジャンプをしてみせ、観客を一際湧かせていた。トークでしゃべると10代の若者らしさがうかがえるが、アーティストとしてはもう超一級と言っていいのでは、という圧巻のパフォーマンスを見せたザ・レモン・ツイッグス。今年はベストアクト候補が多くて困るけど、彼らはその中でも間違いなくぶっちぎりベストだった。

 Photo by MITCH IKEDA  Text by Paula Posted on 2017.7.29 17:50