MONDO GROSSO
大沢伸一のチョイスは有機的なバンドセットだった!
土曜の深夜のRED MARQUEEをブチあげる「TRIBAL CIRCUS」。今年のラインアップは国内外のダンスミュージックを支えてきたレジェンドと新鋭が登場するその中でも、今年、MONDO GROSSO名義では14年ぶりとなるアルバム『何度でも新しく生まれる』をリリースし、90年代からのファンのみならず、新規リスナーにも訴求したタイミングでのフジロック出演はあまりにも嬉しい。興味のベクトルは、本作のリードトラックとなった満島ひかりを迎えての“ラビリンス”を「ミュージックステーション」でも披露したことからくる彼女の出演への期待感、そしてライブのスタイルだった。
エイフェックス・ツインから流れてくる人も含め相当な密度になってきたRED MARQUEE。なんと大沢伸一が選んだ最新作の表現方法はフルバンド・セット! 屋敷豪太(Dr)を始め辣腕ミュージシャンが揃っている様子。大沢本人はあくまでベーシストとしての立ち位置で、新曲群を演奏していく。初期MONDO GROSSO以外でバンドスタイルのライブ未経験なのでことさら新鮮だ。が、新作の生音とエレクトロニクスの自然な融合や全曲日本語詞にこだわった新しいグルーヴを考えると、フルバンドでの演奏は必然だったのかもしれない。
作品にも参加しているゲストとしては、この日はギター&ボーカルとして二神アンヌが、アルバム曲“ERASER”などをプレイ。なかなかロックなテンションを持ったブロックになっていた。さらにはKick a showが登場し、“SEE YOU AGAIN“、そして既存曲である“OUR Song”を歌った。この前向きなバイブスのある歌が再び今のMONDO GROSSOの向かうベクトルにしっくりハマっていることの喜びを感じた瞬間だった。
演奏がシームレスに続き、ゲストに関する大げさな紹介もなくバンドのメンバーのように入れ替わりにボーカリストが登場する気負いのなさも心地よく、そのナチュラルさにフロアも親近感に溢れるムードがどんどん膨らんでいくようだ。新作が相当、ポピュラーな存在になっているということだろう。そこへ聴き馴染みのあるイントロが放たれ、直後に白いアーティスティックなミニワンピ姿でショートカットになった満島ひかりがステージに現れた時の悲鳴に似た歓声は、「まさかの!」と「やはり!」がないまぜになった大きなものだった。曲はもちろん“ラビリンス”。MVでも見せたコンテンポラリーダンスもかくやな身体表現も素晴らしく、有名女優というより、満島ひかりというアーティストに対して惜しみない拍手が送られていた。いや、それにしても場を圧倒する旬の存在感のすごさとはこういうことなのか。時代の切っ先にいる生き方も憧れられる女性がフジロックのRED MARQUEEのステージに立っていることのポテンシャルにも興奮した。
満島ひかりがステージを一旦去ると、いよいよ大沢伸一とは盟友と言っていいbirdの登場だ。さらに大きくなった歓声、それはMONDO GROSSOとしてもbirdとしても一つ確かなヒット曲でもあり、特徴を決定づけた“LIFE”が演奏されたからでもあるだろう。そこここで歌う人続出の上、言葉に出して「この歌好き!」と叫んでいる人までいた。
LIFE——人生は続く、でもブルージィなイメージのそれではなく、転生しながら人は生き続けるという意味合いの方が強いだろう。大沢伸一が少なからずポップ・ミュージックの最前線に戻ってきた新作リリースのタイミングに続き、有機的なバンドスタイルで今のモードを表明した、この日ここにいた誰しもの記憶に残る新しい船出の1時間だった。