LIVE REPORT GYPSY AVALON 7/29 SAT

Declan O’Donovan

酔いどれ詩人の歌に酔う

フジロック2日目、19時を回ると朝から降り続いた雨もようやく落ち着いてきた。会場のジプシー・アヴァロンに登場するのは、カナダ北西部ホワイトホース出身のデクラン・オドノヴァン。トム・ウェイツやボブ・ディラン、ランディ・ニューマンを彷彿させる新しい才能と噂のシンガー・ソングライターだ。

定刻にゆったりとデクランとバンドがステージに登場した。リヴァーヴのきいたギターが入り、デクランがピアノの鍵盤を軽快にはじくと”Down To The Bottom”がはじまった。のっけから胸に迫り来るデクランの熱い歌声。パフォーマンスも一際目を見張るものがある。ピアノを時に優しく、時に激しく叩いて楽曲の機微を表現し、ピアノを弾いていない時はジェスチャーで内にある情感を表現しているかのようだった。発する声、奏でる音、そして繰り出すパフォーマンス、そのすべてからデクラン・オドノヴァンという世界が形作られている。

デクランが「ありがとうございます!」と挨拶を一言入れ、ピアノでいなたいフレーズを奏でて“Keep Me In Mind”を発信した。訴えかけるような言葉の塊がこれでもかと飛んでくる。続く“Reckless”はピアノから繰り出される悲しげなメロディの奥底にマグマのようなほとばしる熱気を漂わせる曲だ。デクランの自由奔放な表現をしっかりと支えるバック3名のミュージシャンシップの高い演奏も素晴らしい。ベースとドラムは跳ねまくるデクランのピアノの基礎リズムをしっかりキープし、ギターはピアノと同レベルの熱量のギターソロで応えるのだ。

デクランはピアノを離れ、アコギを手にし、“Something To Run Away From”のフレーズを爪弾く。古びたバーでバーボンでも傾けたくなるような大人向けいぶし銀満載の曲だ。たまらない。「ひろしさん(トムス・キャビン代表の麻田浩氏)に捧げる!」と“Hank”がこれまた良かった!コミカルに刻まれるリズムが心地よい。中盤のテレキャスから繰り出される流麗なスライドギターのバックを暑苦しく支えるリズムセクション。ギターのフレーズの糸がゆっくりとすーっと引いていくかのようにしっとりと終えた。

「最後の曲です」語るや妖しげな紫の照明がともり、ジャジーなムードの中“I Want You Close”がはじまった。厳かに響き渡る低音のスライドギターが鋭いアクセントになっている。ラストを叩きつけるピアノと、あらん限りに出力されるドラムビートが飛び交うグルーヴィーで激しいセッションで大量の熱を放出してステージを締めくくった。このステージは大成功だったようだ。終演後の鳴り止まない拍手と続々と物販コーナーに並ぶお客さんがその証拠。それと、たまたま本ステージをFUJIROCKERS.ORG主催の花房浩一と観ていたのだが、1曲目の“Down To The Bottom”の後に彼が「(帰らずに)観ると思う」と一言。ほんと、気に入らなかったらまず観ないからね、この人は(笑)。渋く熱い大人の時間を過ごさせてもらった。デクランとバンドに乾杯!

~ライヴ情報~
Tom’s Cabin “聴かずに死ねるか”シリーズ
DECLAN O’DONOVAN
デクラン・オドノヴァン来日公演2017

2017年7月31日(月)
梅田クラブクアトロ
開場18:00 / 開演19:00
前売¥5,000 / 当日¥6,000(入場時1ドリンク代)
http://www.club-quattro.com/umeda/schedule/detail.php?id=7295

2017年8月1日(火)
渋谷クラブクアトロ
開場18:00 / 開演19:00
前売¥5,000 / 当日¥6,000(入場時1ドリンク代)
http://www.club-quattro.com/shibuya/schedule/detail.php?id=7292

~インストアイベント~
2017年7月30日(日)
”PIED PIPER HOUSE presents
デクラン・オドノヴァン『ブロークン・スカイ』発売記念ミニライヴ&サイン会”
タワーレコード渋谷店 7Fイベントスペース
14:00~ ※観覧自由
<内容>
第1部:長門芳郎+谷口雄(1983、ex-森は生きている)トークショー『ピアノマンの系譜』
第2部:デクラン・オドノヴァン ミニライヴ&サイン会
http://tower.jp/store/event/2017/07/003155

 Photo by Sayaka Yuki  Text by 三浦孝文 Posted on 2017.7.29 19:30