JET
これぞジェットンロール!
2009年以来8年ぶりの苗場帰還とあってステージ前方はまだ開演までしばらく時間があるにもかかわらず待ちわびたオーディエンスでぎっしりだ。会場一体がドキドキワクワク感で充満している。ドラムに描かれたカタカナの『ジェット』が可愛いとか、いかにジェットのステージを楽しみにしていたかを熱く語り合い、セットリストをああだこうだ予想し合っているような集団も散見される。今朝から降り続いていた雨もピタッと止み、心地よい風が一体を優しく包み込んでいる。これは、これから激アツのステージがはじまる前の静けさってやつだ。
ステージに鳴り響くパブリック・エネミーの“Don’t Believe the Hype”が一段と大きく鳴り響き、左右のスクリーンに映し出される『JET』の文字!さぁ、ジェットンロールの準備はいいか?どんどんステージ中央に人が終結してくる。定刻にリンク・レイの名インスト曲”Rumble”を合図に、メンバーがゆったりと登場した。フロントマンのニック・セスターのグラサンに髭面という変貌ぶりに一瞬面食らってしまったものの、AC/DCの“Live Wire”のような入りのベースがボンボン入ると一発で分かる“Cold Hard Bich”のリフが刻まれると、たまらずそれに合わせて笑顔で拳を天に向かって突き上げ、ハンドクラップしで応戦する。続くセスター兄弟のボーカルの掛け合いからはじまる“Get What You Need”の中盤で流麗に流れるキーボードのソロの後に「俺たちがオーストラリアから来たロックンロールバンドのジェットだ!」だなんてシャウトしキメキメのギターソロをかますものだから盛り上がらないわけがない。
“Put Your Money Where Your Mouth Is”のヘヴィなリフが出力される大歓声が沸き上がった。待ちわびたジェットンロールの連発にオーディエンスは狂喜乱舞だ。ニック十八番のシャウトもようやくキレが出てきた。ベースがあのフレーズを奏で、“She’s a Genius”がはじまると、ニックのあおりにオーディエンスも「オーオーオーオー」とレスポンス。ロック野郎どものケツを蹴り上げるリフとギターソロに思わず涙がちょちょぎれる。ロックファンのツボを知り尽くした音運びだ。
「日本に戻って来れて嬉しいよ!5回目の日本だ」とお次は一転してポップで軽快な“Skin and Bones”だ。「無理すんな。そのまんまで愛してるぜ。」と繰り返されるサビが染みる。ピアノの調べが響く中、コールアンドレスポンスからはじまった“Seventeen”。しっとりさせるメロディに合わせるかのように激しい雨が降り始める。急いでポンチョ姿になりながら続く“Lazy Gun”に腰を揺らすオーディエンス。サビの爽快な音と歌が苗場の森に感動的にこだまする。降りしきる雨が今この瞬間に何とも映えるのだ。
小休止の後、繰り出された“Rollover D.J.”のリフに反応し飛び跳ねるオーディエンス。お楽しみのロックンロールショウはまだまだ続く。“Walk”でのクリスのダルなMCからのバンドが醸成するグルーヴ感がほとばしる間奏部は本セットのハイライトと言っても良いほどかっこよかった。
その後、ニックがおもむろにカメラを取り出し会場に向け、写真を撮る。そして“Look What You’ve Done”がはじまり、ニックがステージを降り前方のスピーカーの上に立ち歌い上げると、合唱が起こり、一体となった会場は感動に包まれた。“Black Hearts”で再びロックンロール熱を注入し直す。やっぱりニックの声はセクシーだなぁ。「ロックンロールスターってのはこういうシャウトするよな」っていうことをベストなタイミングで入れてくれるのだ。キーボードのメンバーを紹介し、響き渡る“Bring It On Back”のフレーズ。“Look What You’ve Done”もそうだが、ビートルズの影響を感じさせる楽曲は一瞬で会場をひとつにさせる。かつてジェットが『オーストラリアのオアシス』と呼ばれていたのをふと思い出した。
ニックがタンバリンをシャカシャカ鳴らしはじめ、あのベース音がボンボン入り、ギターがキレ良くカッティングされるとオーディエンスが前方にドッと押し寄せ、モッシュの嵐が吹き荒れた。ここで“Are You Gonna Be My Girl”を満を持して投下。クラウドサーフまで飛び出し、予想どおりの大盛り上がりだ。そのままオールドスクール感満載の“Get Me Outta Here”のロッケンローなリフを繰り出し、上がりまくった熱を下げるつもりはまったくない。本日のセットのラストはノリノリにブチ上がるロッケンローチューン“Rip It Up”だ!ステージ前中央に突如サークルが出来、ぶつかり合うグチャグチャな状態に。ニック本日一番の渾身のシャウトとともに「これぞジェットンロール!」なステージを締めくくった。