LIVE REPORT WHITE STAGE 7/30 SUN

トクマルシューゴ

音の魔術師が贈る遊び心がつまったポップワールド!

雨がやんだ。ただもうそれだけで心も足取りも軽く、ホワイトステージへと向かった。もうすぐトクマルシューゴのライヴがスタートするのだ。バンドGellersでの出演を含めると、今年で6回目のフジロック出演となり、ホワイトでは2回目。すでにかなりの人がステージ前に集まっていた。なかにはイタリアやシンガポールの旗を振る外国人もいて、海外でも高い評価を受けるトクマルらしいなと思った。

最初にドラムの岸田佳也がステージに現れて持ち場に着くと、続いて他のバンドメンバーと一緒にトクマルシューゴが登場した。遊び心のあるイントロに観客が湧くなか、トクマルの弾くギターの音色がホワイトの空間に響き渡った。”Bricolage Music”だ。ステージの左側ではメンバーのユミコとチアキが、さまざまな楽器やおもちゃみたいな非楽器をとっかえひっかえ演奏して、音楽に豊かな深みを加えている。そして楽しさも。「トクマルシューゴ、始めます!」とトクマルが観客に挨拶すると、ウォーと歓声が上がり手拍子が始まる。2曲目に演奏したのは”Katachi”。トクマルの柔らかな歌声と軽快なメロディーが素敵である。

とにかく見所がいっぱいあり過ぎるパフォーマンスだ。ユミコが演奏する面白いガジェットの数々も見ていて飽きないし、トクマルが時折見せるギターソロもすごいテクニカルで圧巻だし、そこかしこに遊び心があふれている。ハイライトの一つは、ゲストに明和電機が登場して”Vektor”を演奏した時だ。 背中に羽のような自前の楽器を背負っていた明和電機は、手に持っているスイッチのようなもので羽の先に付いている木魚が鳴らしていて、その絵面だけでも観客は大笑いだった。他に、ステージに設置してあった小さなカラクリ人形も演奏に参加していて、最後には曲に合わせて首が飛ぶというサプライズも!音楽的にもビジュアル的にも楽しすぎる。

前日に雨の中苗場山に登り、山小屋でフジロックの由来についておじさんと語ったというトクマルのエピソードの後は、人気曲”Parachute””Rum Hee””Down Down”とたたみかけるように演奏してホワイトを盛り上げた。ラストの曲で再び明和電機が登場して、奇天烈な演奏をしていたのも、いきなりメンバーたちが観客を背景にセルフィー取り出すのも可笑しかった。見る者を楽しい気持ちにしてくれるゆるさがとても魅力的だ。また、ユニークな楽器使いは細やかなのに、全てのパートが奏でられて生まれる音楽には壮大さすらあって奥行きが深い。トクマルはそれを全て一人で指揮して、かつ自分でも超絶技巧の演奏をするのだから、そりゃあ“ポップ・マエストロ”という冠ももらうよなぁと感嘆した。ファンタジックなポップワールド、ごちそうさまでした!

 Photo by MITCH IKEDA  Text by Paula Posted on 2017.7.30 14:10