LIVE REPORT WHITE STAGE 7/30 SUN

レキシ

苦節5年(!?)コミカルですが出演できました!

「訊いていいですか?ここほんとにフジロックですか?」——レキシが入場規制のかかったホワイトのオーディエンスに問いかけるのも無理はない。5年前、スマッシュの運営に出演を懇願するも「コミカルすぎる」という理由で断られたという(イケチャン曰く、ですよ)エピソードからくるものでもあり、パンパンに膨れ上がったその景色を見てのことでもあったんじゃないか。

非常に丁寧なサウンドチェックを済ませるとおなじみの法螺貝が鳴り響き、健介さん格さん(奥田健介 / Gt from NONA REEVES)、TAKE島流し(武島聡 / Sax&Fl )、元妹子(村上基 / Tp from 在日ファンク)、御恩と奉公と正人(鈴木正人 / Ba from LITTLE CREATURES)、蹴鞠Chang(玉田豊夢 / Dr)、元気出せ!遣唐使(渡和久 / Pf&Cho from 風味堂)が登場、バンドが音を出したタイミングで白と赤で決めた羽織袴姿のレキシがイルカのビーチボールを手になだれ込み、早速四つ打ちビートの“KMTR645”で飛ばす。2曲目には新曲“KATOKU”でキラッキラの80sサウンドを聴かせ、「フジロック、家督を譲ってくれ!」と、出演権なのか世代交代なのか不明なMCも発するほど初出演が嬉しい様子。外国人を含む初見のオーディエンスも巻き込んでファンキーなグルーヴといちいち曲中に挟まれる小ネタで笑わせながら、ホワイトで見たことのない景色が広がる。そういえば、羽織袴のイケチャンが山々を背景にした絵面がビジョンに映し出された時のシュールさったらない。

「そろそろ人の曲やった方がいい?」と問えばファンはイェー!「なんでもイェー言うな!」「(人の曲とは言え)ビョークは分からないよ?」と、切れ味鋭いノリツッコミで序盤からお腹が痛い(笑)。そしてそのまま、チェッカーズの“涙のリクエスト”をワンコーラスやってしまう。そこからただでさえ暑そうなのにさらに着物を着せられての“SHIKIBU”まで、一気に展開したブルーノ・マーズも真っ青なファンクショー。しかし。ここからが長い。

改めてフジロック初出演がよほど嬉しいのか、「物販で稲穂、今回は売れないってわかったからって持ってくるんじゃないよ!帰りどうすんだよ!」と、嬉しさ余って口の悪くなる発言にもファンはイェー!「ダメだよ、なんでもイェー!言うのは」と、再び古参のファンをなだめながら、後方で移動しつつあるオーディエンスには「YUKIちゃんに移動してる人、ありがとう!レキシでした!」と、個別対応。

「じゃ、残った人で縄文土器。ちょっと泣きそうなんですけど」と、本音が漏れる。もちろん曲は“狩りから稲作へ”だ。曰く、稲穂をここにいる全員に配りたかったが、とても足りないので一粒ずつにするか、それも時間がかかりすぎると、前方の女子にプレゼントして、おなじみのフェイクのコール&レスポンスを展開する。その途中、「あ、申し遅れました、サンダーキャットです」というネタは個人的に重量級だった。どんなネタかといえば、サングラスを外し、手を「あぃ〜ん」の形で鼻のあたりで水平にする。サンダーキャット『DRUNK』のジャケ写の形態模写だ。そこからスティーヴィー・ワンダー〜ジャズテイストへと演奏が展開し、くだんの「コミカル過ぎて運営から断られた」エピソードをぶっ込む。

「これレキシが出演できたってことはフジロック、コミカルもOKになったと言うことでよろしいですか?いらっしゃいますか?運営の方?」……なんだかコミカルを一身に背負っている感じだが、確かに武道館クラスでこんなバカなこと(褒めてます)をやれるアーティストが言ってるんだから、むしろ今後出演したいコミカルなアーティストのハードルはぐっと上がってしまったかもしれない。

で。4曲で終了して帰ろうとするバンドをファンがすかさず止めにかかって、「そんなに言うならアンコールやりますか」、またまたイェー!「散々コミカルすぎると言われて断られて、本望ですとか強がってた、バカバカ」と、過去の自分を悔いる様もラブリーすぎる。そして「今日ばかりはフジで武士を歌っていいですか?」と、“きらきら武士”の「武士」を「フジ」に変えて歌う。が。「濁音じゃないと歌いにくいわ」と、早々に武士に戻す。なんじゃそりゃ。

演奏がスムーズ過ぎて、特に“狩りから稲作へ”の長い展開など、相当なスキルなのだが、全く当たり前だと思っている自分が怖い。おそらく初見の人もそうだろう。想像以上に万感の思いのこもった「フジロックが好きー!」から、エンディングまでのみんなのダンスも凄まじかった。ホワイトを笑いと演奏で本当に揺らしたレキシの歴史的60分。いや笑い過ぎました。こちらこそ「レキシが好きー!」って思い切り言いたい。

 Photo by MITCH IKEDA  Text by 石角友香 Posted on 2017.7.30 15:50