Ásgeir
神秘の世界へ誘うセレスティアルな歌声
アウスゲイルが2014年に初めてフジロックに出演した時もホワイトステージだった。もう少し明るい時間だったけれど、その時も彼が作り出す美麗な音楽世界とホワイトの相性の良さが話題になっていたのを覚えている。今年の5月に待望の2ndアルバム『Afterglow』をリリースしたアウスゲイルが、フジロックへ再び出演し、しかもそれがホワイトステージだと知った時は「よし!」と思った。アウスゲイルの繊細な音楽は、やはり音響の良さに定評のあるホワイトが一番映えると思ったからだ。そしてその予感は今日確信へと変わった。
定刻の19:50になると、バンドメンバー5人と共にアウスゲイルがステージに現れた。アウスゲイルは青いロングTシャツに黒Tシャツを重ね着して、金髪をぴっちり後ろに撫でつけている。1曲目は1stアルバム『In The Silence』から”Head In The Snow”。歌声の最初の一言で歓声が上がった。彼の優美な歌声は健在だ。幻想的なフォークトロニカに乗せるアウスゲイルのファルセットはやっぱりため息が出るくらい美しい。2曲ほどプレイして観衆をうっとりさせたところで、初めて「こんにちは」と日本語で挨拶した。 それ以外のトークは少なめで、神秘的な音楽に浸りきることができた。
タイトルどおり夢見心地な “Dreaming”やピアノが奏でるメロディーが甘美な”Afterglow”、イントロで歓声が上がった人気曲”King And Kross”。少しアレンジを効かせたライヴ・バージョンもまた魅力的だったし、バックを支えたバックバンドの演奏も厚みがあって素晴らしかった。英語でCelestial(セレスティアル)という言葉がある。「天国の」とか「神々しい」という意味だ。夜を迎えたホワイトステージで行われたアウスゲイルのライヴを一言で表すなら、まさにセレスティアルという言葉を使いたい。それだけ神々しくて、素晴らしいステージだったから。
終盤に演奏した”Going Home”では、中盤にアウスゲイルを含む4人のバンドメンバーがシンセをプレイするブレイクに入り、ステージから圧倒的な重低音が響いたのが気持ちよかった。ラストにはホワイト中から手拍子を浴びながら”Torrent”を演奏。11月に来日公演をするという嬉しい告知を交えて感謝の気持ちを述べたアウスゲイルは、最後に観客の写真を撮り、メンバー全員とお辞儀をしてからステージを去っていた。神々しいほどのステージで再びフジロックの観客を魅了したアウスゲイル。ポップさも兼ね備えるフォークトロニカと心に染み入る歌声にホワイトが恋した1時間だった。