LIVE REPORT RED MARQUEE 7/30 SUN

THE STRYPES

残りの体力・気力・精神力を、全てこのステージに捧げる……!

レッド・マーキーの大トリ。3日間の集大成。もちろん、フジロックのために蓄えに蓄えた体力・気力・精神力、すべてこのステージのために燃やそう、なんて思っていたのだけれど、まだ若干20歳の若造たちにこれだけ楽しい経験をさせてもらえるなんて!図太い演奏、絶妙なステージング、貫録たっぷりの態度……もうライブレポートを書くことなんてどうでもよくなってしまって、気が付いたらモッシュゾーンで汗だくになりながら馬鹿みたいに踊っていた。ちょっと不覚だ。3日間のすべてを、The Strypesがかっさらっていった!

開始20分前からレッド・マーキーに集まる人人人。ファンの熱気なのか、それとも連日続く雨による湿気のせいなのか、もうすでに汗がじわっとまとわりつくような暑さだった。そこで流れるThe Whoの“The Ox”。曲がかかった瞬間、ただでさえ人だらけの前方により沢山の人が押し寄せてくる。もうこの状態だけで、観客達がどれだけThe Strypesに期待しているのかがわかる。メンバー全員の服装がスーツやチョッキなどの正装チック。服に着られているというか、少し背伸びをしている感じで可愛らしい。この前まで高校生だったんだもんなあ~……。

まずは、新譜『Spitting Image』から“Behind Closed Doors”と“Easy Riding”。演奏が始まってしまえば大人顔負け。エヴァン・ウォルシュ(Drums)のスカッとするような気持ちのいいドラムに、ピート・オハンロン(Bass Guitar/Harmonica)のうなるベース、耳に残るギターサウンド。そして、巻き起こるシンガロングにクラップ&ハンズ!ロス・ファレリー(Lead Vocals/Harmonica)のハーモニカにタンバリンなどの小道具の使い方も、まるでベテランのパフォーマーのようだった。
この2曲は、中央のロスと上手のジョシュ・マクローリー(Lead Guitar/Vocals)の2人が順に歌いあげる。声の質が異なるボーカルが2人いることで曲の雰囲気がガラッと変化するのも、The Strypesの強みの1つなのかな、なんて思う。

“Get Into It”は、拍手と共に加速していく。ドラミングだけで煽りに煽られ、起こる大合唱。生音を体感したり音源とは異なるアレンジを聴くことができたりするのもライブの醍醐味なんだろうけど、観客の反応に応じて対応を変化させるようなステージングも秀逸だった。一つの体験として、単純に楽しい。音楽そのものの凄まじいエネルギーをステージ上から浴びるように感じた。“Great Expectations”では、ジョシュのギターサウンドの野太さや、ソロパートの技術もきらりと光る。そこに絡み合うように心地よいベース、根底を支えるドラム。ただ大人見しているには勿体ないくらいだった。どうしたって、体がうずいてしまう。

“Mystery Man”では、デビューアルバムの人気曲、かつアップテンポなチューン。更にモッシュが起こり、ダイバー続出!端から見たら、The Strypesと観客が、演奏VS集団行動で競い合い、どちらが凄い表現をできるのか?のバトルみたいだった。そりゃそうだ。まだまだ若造たちが、こんなステージを見せてくれたんだ。平均年齢30代40代のフジロッカー達が、応じない訳にはいかないでしょう!
“What a Shame”、“Blue Collar Jane”では、時に音のボリュームを小さくしてみたり、スローテンポにしてみたり、ロスとピートの2人が演奏のリズムに合わせて交互に顔をこちらに向けたり。ただ盛り上げるためだけではなくて、見ている人全員を楽しませるための音やパフォーマンスの足し算・引き算が本当に上手い。こんなライブ、何十年と活動しているベテランバンドマンしかできないでしょ!中におっさんでも入ってるんじゃないか!?と思うほどであった。

本編最後は「ラストソング!」という声と共に“Scumbag City”のイントロが流れる。まあ~これが楽しかった。うなるギターに分かりやすいサビ。手を挙げながら、歌いたくもなる。間奏部分では、ジョシュが前方に出てきて「全員しゃがめ!次のサビで全員飛べ!」と促す。満員のレッド・マーキーでジャンプ。想像しただけで、でワクワクが止まらない。もうライブの楽しさが全部ここに詰まっているじゃないか!?ってくらい。ジョシュの合図と共に、揺れるレッド・マーキー!起こる大合唱!もう会場にいた全員が、体力の全てをここで使い果たしてしまったんではないだろうか。

アンコールの“Heart of the City”を含めて、熱く踊り狂った1時間10分。グリーンステージでビョークが始まっている?いやいや、そんなの関係ない!こんな凄いライブをするんだもん。最後の最後まで目を離すことができなくて、夢中になってしまったよ!
11月の来日ツアーが決定しているThe Strypes。前回の来日から急成長を遂げたんだし、今から短期間で更にヤバいライブをしてくれるはず。でも更にヤバいライブって何なんだ?全く想像ができない。今から体力作りをして、どれだけ凄まじいライブをされても耐えうるだけの準備をしなければ!

 Photo by 古川喜隆  Text by あたそ Posted on 2017.7.30 20:00