むぎ(猫)
(猫)は地球を救う。はず。
むぎ(猫)が、出囃子の“千年にひとり(by原マスミ)”にのってダンスしながら登場すると、あたたかくもあり、戸惑いとどよめきが合わさったような歓声が苗場食堂に満ちた。笑いと、「あ、しゃべるんだ」というストレートな感想があたりを行き交う。まあ、ステージに巨大な猫がどしっと立ってるんだもの、戸惑っても仕方ないよね。
むぎ(猫)は、昨今ありがちな「え?これがバンド名ぃ?」という謎バンドではない。むぎ(猫)は、まぎれもなく猫!歌って木琴を叩く猫のミュージシャンだ!一度他界した後に、カイヌシ氏が作ってくれた新しい体に戻ってきたむぎちゃん。せっかく戻ってきたからには、人間を楽しませるべく音楽パフォーマンスをしているという、全猫好きフジロッカーが感涙しそうなエピソードがあるのだ!戸惑っている場合じゃない、ライブがスタートする。
一曲目の“どんなふうに”で、むぎちゃんが木琴を演奏するなり、会場は「なんらかの芸事」を見に来た雰囲気から変わって、音楽を聴く態勢が整った。軽快なテンポの楽曲に合わせるむぎちゃんの歌声は、独特の柔らかさでなんだかほっこりしていて、会場は一気にほんわかムードに。
「みなさんが思っていることね、ご察しの通りです。むぎは沖縄から来たんですけど…苗場も暑いですね…(ゼエゼエ)。」あ、そういうことは、言っちゃう感じなのね!と客側もなんだか安心する瞬間である。というわけで、一曲終えるごとにゼエゼエ言っちゃうむぎちゃん。そして、決めポーズの「あっちょ☆」を突然披露するむぎちゃん。いろいろ、突っ込みたくはなるけど、ママに抱っこされながら見ているお子さまが、すんごく楽しそうな笑顔をしているというその事実が最高なので、それだけでいいと思う。
盆踊りビートで太鼓の演奏も披露しながら、地球温暖化について歌う“あがってく音頭”や、テクノ調な“履いてくのロジー”など、音楽性が多様かつ、取り上げる題材もニャン生(人生)経験豊富なむぎちゃんならではだ。そして、沖縄から連れてきたお友達、ねずみのチュー太くんを食べたくなっちゃう歌を歌うむぎちゃん。「♪友達は食べちゃダメ」って。うん、知ってる!こんな笑えばいいんだかなんだかわからない世界観ながら、自然と耳に馴染むクオリティの高い楽曲たちで、すっかり観客の心をつかんでいった。
「むぎは天国から帰ってきたんですけど、苗場も天国みたいなところだと思いました。」とフジロッカーには嬉しいMCから、ラストに披露されたのはレゲエ調の“天国かもしれない”。終了後には「普通にめっちゃいい曲じゃね?」という会話と、サビの「♪たぶんヘブン」を歌いたくてしょうがない人たちの歌声があちらこちらから聞こえた。猫界初のフジロック出演という快挙を成し遂げたむぎ(猫)。シュールとも、ほっこりともとれる世界観と楽曲の良さにはまってしまった人は多そうだ。