MINAKEKKE
雨の夜を自分のものにして、彼女はギターを弾いた
土曜日を通して降った雨が日曜まで続く。そんな午前1時に「夜が最も似合う女性シンガー」をプロフィールに記すMINAKEKK(ミーナケッケ)は登場する。リズム隊のほかにシンセサイザー&PC、そしてファゴットという編成のバンドを従える彼女は、1音目からスピーカーいっぱいの出力で轟音を観客に浴びせてきた。
ライブはダークで歪んだモダンロックナンバーから無機質な四つ打ちビートのメロウチューンまでバンドアンサンブルの表現力を活かした様々な楽曲が演奏された。MINAKEKKはアコースティックギターを見つめながら弦を力強くはじいたり、ふわりと長い髪をさかんに揺らしたりして伸びやかで儚さを持つ歌声を乗せていく。観客側に照射される青いステージ照明には止まない雨が光り、オーディエンスの視聴体験は実に陶酔的なものとなっていった。
最小限のMCを挟みながら己の時間を重ね、彼女はあっという間に30分間のパフォーマンスを終盤に運ぶ。そして「また来年お会いましょう」と話し、アコギの音色と優しさと憂いをはらんだ歌声から激情的バンドアンサンブルへと展開するラストチューン「L.u.x.」で聴衆をさらに圧倒。フジロック初舞台に強烈なインパクトを刻み、ルーキーを去った。