DATS
時代の変わり目を感じるREDの口火を切ったアクト
今年のフジロック、特に今日金曜日のThe xx やSAMPHA、RHYEといった海外勢が出演する日のRED MARQUEEの口火をきるアクトとして、DATSはふさわしいバンドでもあるし、最強のスロットだとライブ終演後に思いを強くした。なんでも現行の海外シーンとリンクしていればいいというものではないけれど、音楽的な世代交代が起きていることは自明なのだから。
サンプラーから打音が流れ、Tシャツ姿のラフないでたちのメンバーーー杉本亘(Vo)、伊原卓哉(Ba)、早川知輝(Gt)、大井一彌(Dr)がステージに登場すると、前方はすでにある程度のファンベースができている様子だが、朝一にとりあえず様子見というオーディエンスも多い。上手から大井の生とパッドなどを含むドラムセット、ギタリストだがサンプラーやシンセも担当する早川、歌いながらサンプラーを駆使するバンドの頭脳、杉本、そしてベーシストだが、フロアタムをぶっ叩く&シンセも弾く伊原。そう、いわゆるエレクトロ、ベースミュージックを人力を交えたプレイスタイルで聴かせるバンドの中でも、DATSの自由度の高さは独特なハイブリッド感に溢れている。
2曲目で“Mobile”がプレイされると大きな歓声が上がる。大井のスネアのカッチカチなサウンド、ギターで言うところのワーミー系エフェクトでニュアンスに富むベースを弾く伊原。このメンバー横一列のヒーロー感はなんなんだろう。音源のクールさに比べ、ライブはフィジカルとエモーションにダイレクトに入ってくる。それでいて、ブレイクや音の膨張、収縮の緩急、重層的なアンサンブルの後にスッと音が抜けるスリル。こんなこと、音楽的に趣味が合うとか、リハを重ねるだけじゃ無理だと思う。序盤で早くも大井のドラムソロを挟むのだが、彼やバンドが共通認識として持っているクリス・デイヴ的というより、削ぎ落としたジャズ / フュージョン感に、テクニックとしての面白さより、曲が求める新しい人力ビートの割と真っ当なあり方をも見た。
音の抜き差しで言えば、さらに磨きがかかり、終盤に向けてカオティックになりつつつエンディングでスッと抜く“Queen”の出来も上々。加えてセッションタイムには、ラッパーの荘子itが登場。大井はドラムセットから離れ、ステージ中央でフロアタムのリムを叩き、荘子itはビューマンビートを繰り出す。さらに荘子itとDos Monosで活動するIizuka Taitanも加わって、リアルタイムのラップ・ミュージックを構築していく。DATSのナンバーは英語詞だが、Dos Monosが登場したことで、割とストレートに彼らや仲間たちの音楽を更新してシェアしていくスタンスが明らかになった。スタイルのために新しい演奏スタイルやアレンジを編み出してるわけじゃないし、SNS世代のリアルを表現している割には、ライブでのDATSにはシニカルな側面を感じない。新しい音楽の楽しみ方を全身でレプレゼントしてるだけなのだ。それはつまり、自分自身が楽しいからーーそんなシンプルな強度がある。
輝度の高い早川のギターは、アルバム『Application』のサウンドもライブ・アレンジでフィジカルに聴かせる効果を放っていたが、ラストに1st EPから、いわばギターバンド色が濃かった頃のナンバー“Candy girl”を選んだことも、彼らのアレンジ力の成長や、そもそものメロディの良さをきっちり見せてきた印象。
50分のステージ、言ってもまだニューカマーと呼ばれるバンドがこれだけ起伏に富んだキャリアを俯瞰するライブをやったことは大げさじゃなく尊敬に値する。
杉本と大井は夜にはyahyelでも登場。そちらも楽しみだ。