DOCTOR PRATS
午前3時、まだまだ遊び足りない者たちへ
前夜祭のレッドマーキーに登場し、ホワイトステージのトップバッターをつとめた「ドクトル・プラッツ」は、どちらの巨大ステージおいても、やすやすと熱狂の渦を生み出した。多くのオーディエンスにしっかりと自分たちの名前と音を刻み込んだうえで、ここにきて小さな、されど、とことんアツいダンスホール、クリスタルパレスに登場した。
まずは、後列のメンバーが並び立ち、ヴォコーダーを通した声で「フジロック!」と煽りを入れる。それはそのままライヴの始まりを告げる号砲となり、フロントのメンバーが、これからの盛り上がりを予感させる、極めて大きなアクションで登場。1曲目は彼らの名刺代わり、かつ、オーディエンスに火を入れる代表曲、「Ara!」だ。
ギターの小刻みなリフが走り、フットボールのチャントにも似た「叫び」のサビがやってくれば、クリスタルパレスの床が上下にたわむ。午前3時になっても、まだまだ遊び足りないオーディエンスの期待を裏切らないダンスナンバーは、のっけからレッドゾーンへ突入。叫びと汗と抑えきれぬ笑みが、いたるところで吹き出していた。
ラテンをベースにパンクを振りかけ、スカにレゲエ、そしてクンビアまでもを盛り込んだ展開は、マノ・ネグラ以降のラテン・ミクスチャー、メスティソ(混血)音楽の特長でもある。そこに、4つ打ちのビートや、ダブステップのエフェクト、フロントに立つメンバーが魅せるMCバトルに軽やかなステップなど、挙げればキリがないルール無用っぷりが、盛り上がりに拍車をかけていた。
アヴィーチーの「The Nights」をカバーする懐の広さは、カタルーニャやスペインにおける、ラテンの新世代バンドの情報を追っていない日本のオーディエンスにもすんなり受け入れられたように思う。そしてなにより、バンド自体が、新しいことに取り組み、発展させようという明確な意思を持っている。音と踊り、オーディエンスと踊り、フジロックと踊った生音ダンスバンドの動向から、今後も目が離せない。