バスクのスポーツ
雨雲を驚かした奇天烈音楽団の快演
音楽体験の種類は様々だ。ヘッドホンで座して音源を聴く、ショップやクラブのスピーカーで楽しむ、YouTubeで検索して見つける。手軽なものも多いし、最近は視聴環境も高品質なものがたくさんある。しかし、バスクのスポーツが繰り広げるパフォーマンスを目の当たりにしたときなんかは、演者を生で観ながらという体験がいかに刺激的なものか、改めてハッキリとわかる。
登場から鮮烈だった。ノウミ(Key)が「Regatas de traineras」の荘厳なイントロを弾いたかと思った次の刹那、26時の目を叩き起こすような強烈なバンドサウンドが堰を切る。そのまま違和感を楽しませる変則のマスロックビートが驚きと高ぶりを与え、いちオーディエンスの私は踊りながら「あ、いつの間にか雨が止んでいる」と気付かされるほど音に飲み込まれた。
それにしたって特長の多い楽団だ。413(Dr)と磯8(B)の硬質だが躍動感のあるリズムもそうだし、ノウミのアイデア豊富な鍵盤さばきもそう、あとなんか知らんけど昭和の商店にありがちな電光掲示板がアンプの上に置かれてプリミティブなメッセージを送り続けてるのもそうだ。しかしなんといってもギタリスト……なのかパフォーマーなのか、全身を使って声なき音を表現していくカミヤのインパクトはとてつもない。モヒカンで、1曲目を終えてやにわに脱衣してからはスパッツ一丁で、彼は鋭いギターサウンドと同じくらいの用量でその身の野性を晒す。ギターの音に合わせて表情を変える、観客を異様な姿勢で凝視する、ブンブン手を回して6弦を鳴らす……このインストバンドには音声がないだけだ、こちらに届く要素はあまりにも多い!
そんな調子で25分ほどふしぎ発見させていただいたのちに、唯一観客とMCでコミュニケーションする413が「来たかった、苗場!」と喜びを語り、ラストチューン「Txoko」へ。彼らは変拍子と明朗なメロ、ストーリー性のある曲展開というこれまた情報量の多い楽曲を力の限りプレイし、最後の一音までしっかりとオーディエンスの身を揺らす享楽のパフォーマンスをぶつけた。