戸川純 WITH VAMPILLIA
カフェ・ド・パリ2017最大の伝説
物々しい雰囲気のカフェ・ド・パリ。賑やかでエロ満載のポールダンスショーにも目もくれず、ひたすら最前列付近はスタートの準備に集中していた…。こんな「…」の雰囲気に司会者も飲まれたのか、静かに戸川純 WITH VAMPILLIAをコールする。するとベース担当のmicciが「なんかすげーテンション低い紹介された」と戯けてみせたのだ。待ってましたと言わんばかりの笑いと喝采に空気が一変。撮影禁止の注意をメンバー自ら超満員のカフェ・ド・パリのフロアにお願いした直後に登場するVAMPILLIAの面々。そして「純ちゃーん!」に後押しされるように戸川純の姿。ピンクでハートのサングラス姿、そしてゴスロリな出で立ちで椅子に着席。「かわいいー!」と黄色い声も上がる中、冒頭「怪獣」から戸川純の甲高く奔放な歌声にさらに色めきだつ。その歓声に呼応するかのごとくVAMPILLIAのハードコアな轟音が炸裂するのであった。
しかし本番はここから、2曲目「あんまりやらんけど」と前置きしたデヴュー曲「玉姫様」で軽くモッシュが起こり、続く3曲目「バーバラ・セクサロイド」では遂に雪崩のように最前列が押しつぶされる事態に!阿鼻叫喚、興奮と苦悶の表情を浮かべる前列のオーディエンスはそれでも懸命に、着席しながらも振り絞りながら歌い上げる戸川純と、VAMPILLIAの美轟音に熱いレスポンスを送っていた。続く「NOT DEAD LUNA」でも合唱が起こるなど、昔を懐かしむノスタルジーと、VAMPILLIAの手によって新調された楽曲が混在して、新旧ファンが関係なく熱気に揉みくちゃにされていた。もちろんフジを快適に過ごしたい人は耐えきれずにリタイアする現象も起こっていたが、それでもどんどん後列から戸川純を一目見ようと近づく気持ちが圧力となり、最後までキープしていた。それどころか徐々に圧力がジワジワと、危険なほどに増していたのだ。
MCが挟まれ、「撮影禁止だって言ってるのに撮影してる人がいます!」とmicciから注意が飛び出し、「誰だ?邪魔すんなよ」というブーイングで応えるオーディエンス。すかさず戸川純の「告知させてください!」というお願いに笑いが溢れたのだが、5曲目「蛹化の女」からますますヒートアップ。ピークは続く「好き好き大好き」のコーラスでの絶叫!VAMPILLIAのボーカル、モンゴロイド氏の絶叫は感情を吐き出しつつ、戸川純を支えるような楽器の一部のように絶妙のタイミングでカットインされていた。決して邪魔しないし、メインボーカルである戸川純の歌をしっかり引き立たせていたのだ。他のメンバーも漏れなく。ツインドラム編成の竜巻太郎や吉田達也の嵐のような怒涛のドラミングも、轟音を湧き立たせるギターも、しっかりと歌を支えていることにより、ハードコアなサウンドであっても“ポップ”であることをしっかり意識した演奏なのだ。流石である。
「Men’s Junan」〜「赤い戦車」では重厚で溜めを効かせた縦ノリも生まれ窒息寸前。曲終わりの「ありがとう」「サンキュー」をふっと冷静に呟く戸川純のカッコよさは、アイドルというよりもロックスターでありアーティストであることを印象付けた。作品に対する姿勢が全くブレない彼女の芯の強さと神々しさにあやかろうと、手を伸ばすオーディエンス。ラストは「諦念プシガンガ」で熱狂のうちに終え(最後はモンゴロイド氏がフロアに脚立を立てて煽りまくる)、その余韻は直後の物販の長蛇の列に現れていた。
「真昼間からライブするなんて初めて」と漏らす彼女だが、もう間違いなくカフェ・ド・パリ史上に伝説を残した…。戸川純のソロではなく、あくまでVAMPILLIAとのユニットであることを認識しないと、あまりの激しさに着いていけないだろう。しかし、その激しさを乗り越えたフジロッカーで埋め尽くされたのだ。もっと広いステージが間違いなく似合うだろうし、その期待を込めてこのレポートを書いているが、9月には2日に東心斎橋CONPASSにて、29日には広島CLUB QUATTROが予定されているので、是非目撃してほしい。間違いなく「とんでもない」興奮が待っているだろう。