LIVE REPORT GREEN STAGE 7/30 SUN

YUKI

JOYに満ち満ちたステージ

フジロック初出演となったYUKI。先日終了したツアーの内容になぞらえてくるかと思っていたものの、違っていた。15周年を迎えてもアップデートが止まらないYUKIのすさまじいエネルギーを見せつけられるような、新旧の名曲を揃えた完璧なセットリストだった。今日唯一の最新アルバム『まばたき』の楽曲となった“聞き間違い”で「私にしか歌えない歌があるんだ」と歌うYUKI。アルバムコンセプトを「初期衝動」と語った彼女は今、改めてYUKIとして歌うよろこびに満ちているようだった。

ギター、ドラム、ベースにキーボード、ホーン隊とストリングス隊、そしてコーラス隊を引き連れた超ゴージャスなオーケストラセットのビッグバンド調な演奏に合わせ、スキャット風に歌いながら登場し“恋愛模様”でスタートした。白いレースのドレスの背中に羽根をたくさんあしらった衣装、トレードマークのボブヘアーは明るい金髪で、客先に手を向け煽るようなしぐさを見せる。どこまでも華やかで祝祭感のある幕開けに歓声が止まらない。

“Hello!”では、「初めましてフジロック!」と甘い声で発しながら、四方八方360度にハローと呼びかけるYUKI。モニターに大きく映し出されるにこやかな表情を追っているだけで、魔法でもかけられているかのように、どんどんポジティヴな気持ちに満ちていく。その後も“メランコリニスタ”、“ランデヴー”、“ワンダーライン”とアッパーなキラーチューンが続き、グリーン・ステージがどんどんハッピーなムードに包まれていく。

最近のYUKIがそうなのか、今日が特に調子がいいのかはわからないが、声の伸びがとてもいいのが印象的だ。全く衰えを感じさせないどころか、昔より安定しているような気もする。“プリズム”で聞かせた、とても伸びやかで澄んだ声は、日が沈む前のグリーン・ステージの清々しい空気に映え、至極のメロディを作り出していた。

“ハミングバード”では衣装の雰囲気もあいまった神秘的な世界観によって、「妖精みたい」なんて言葉が出てしまいがちだけど、彼女は妖精ではないし、よく例えられているけど、天使でもない。そう言わせる、年齢を感じさせないイノセントなかわいさが、ファンを長年魅了させ続けているのは確かだけど、YUKIは、誰しもと同じく希望を持ち、願うことを忘れず、人を愛して、喜びを手にしつつ、当たり前のように孤独や悲しみと向き合ってきた、生々しい、強い一人の女性だ。だからYUKIの書く「よろこび」に寄り添ったシンプルな歌詞にはリアリティがあって、15年間いつだって共感出来たし、力をもらえた。人間らしさこそがYUKIが発する抗えない魅力の根本なのだと思う。

そして、おなじみのダンスも披露し、たくさんの“J”サインが広がった“JOY”、エレキギターをかき鳴らして歌った“鳴いてる怪獣”、いつも通り「YUKIのワゴンに乗ってくー?」の台詞で始まった“WAGON”と、攻めたてるように会場を盛り上げ、最高潮のハッピームードで終幕した。終始、きらびやかでチャーミングな笑顔を振りまきながらも、貫禄すら感じさせる現在の真価を見せつけたYUKI。終演後、何度も何度も投げキッスをしながら去っていく姿を見終えても、なかなか笑顔がなおらないくらいに「JOY=よろこび」をもらった。やっぱりこれから先だって、「YUKIのワゴンに乗ってくー?」と問われたら、全力でYESしよう。だって、それに乗ったら死ぬまでドキドキできそうだから。これからもYUKIに、ずっとドキドキさせてほしいのだ。

―セットリスト―
恋愛模様
Hello!
メランコリニスタ
ランデヴー
ワンダーライン
プリズム
ハミングバード
聞き間違い
JOY
鳴いてる怪獣
WAGON

 Photo by Yoji Kawada  Text by 東いずみ Posted on 2017.7.30 16:50