FUJIROCK EXPRESS’11

『深夜1時、事件勃発』

　今年のルーキーアゴーゴーの初日。いい具合に盛り上がり、パレスオブワンダーにいるお客さんのエンジンもかかってきた頃に登場したのが湘南のバンド、SiM（シム）である。

　あの場に居合わせた人なら、ご理解いただけるだろう。すんごいライブでした。

　彼らはレゲエとハードコアをミックスさせたミクスチャー音楽を繰り広げる。ルーキーに出演するアーティスト決まったときに、正直フジロックとは毛色が違いすぎてどこまで受け入れられるのか？という思いが頭をよぎっていた。そんな思いを一蹴するかのように、音鳴り出した時点で空間を完全掌握。身振り手振りでオーディエンスは対応する。そこから切り込む。ヴォーカル、MAHが登場するやいなやステージ前にはぽっかりと穴ができ上がり、踊り狂うかのようにモッシュを始める人々。

　この手のライブを見慣れていない人は、口をぽかーんと開けてその様子を見守るばかり。ジャンルとか好きな音楽とかを、いとも簡単に凌駕してしまう彼らのパフォーマンスは末恐ろしいものであった。

　初参戦の彼らであるからこそ、毛色が違うからこそ、全力で攻め込む。その姿勢がかっこいい。あの30分の短いステージで、どれだけ自分たちを体言することができるか。どれだけ場数を踏んでいるとしても、そればかりは本番を迎えてみないとわからない部分。でも、彼らのステージングには自信が滲み溢れていた。その自信全てを一滴残らず、私たちにぶつけてきた。

　終盤には更に事件。「一番でっかいのを作れー！！」という合図で、パレスオブワンダーの半分くらいの大きさのサークルが完成。このでかさ、数年前にホワイトステージのオーディエンスを巨大洗濯機のように回したLess Than Jakeのステージを彷彿させた。圧巻の一言に尽きる。よーいドンでその場にいた100人ほどの人々がいっせいに左回りを始めるのだ。日本にこんなことができるバンドがいることに驚かされた。フジロックでこんな光景が見ることができるなんて！と気がついたら私も駆け出していました。その後もウォールオブデスが起こったり、ダイバーが続々と出てきたりと……フジロックにいるというよりは地下のライブハウスで見ているような感じ。フジロックとは全く規格外なのに、会場が一体なりライブを盛り上げていた。深夜にあんなものを見せられたら興奮が収まらなくて、寝れなくなるではないか。

　「これで満足することがなく、あっちのメインステージに出ることを誓いつつ、ココに爪あとを残していきます！！」

　私たちの脳みそに、そしてルーキーアゴーゴーの歴史に！？強い衝撃という爪あとを残した彼らは、この宣言どおり、いつかメインステージに立つことができると思うので、楽しみにしたい。そして何度でも言わせてください。すごかったー！