若者的閉塞感気狂い系オルタナ!
詰めかけてるぞー、人が!
マジでステージが見えないくらい人が詰めかけているのは、フジロック二日目、深夜のルーキー・ア・ゴーゴーステージ。夜のとばりが降りると出現する魅惑の場外エリア、パレス・オブ・ワンダーが擁するこの新人登竜門ステージは、今年から新しい企画が用意されていた。開催三日間の間に登場した出演者に対してお客さんによる投票が行われ、一位となったルーキー・アーティストに来年のフジロックでメインステージのいずれかへ出場出来る権利が与えられるのだ。パレス・オブ・ワンダーは夢のようなエリアだけれど、これはもう夢ではないのだ。
ステージに立っているのは、「股下89」。そりゃ長ぇなぁーおい! と思いきや、少女のような小柄な四人組。ボーカルのあじまは両手を後ろ手に組み、佇まいはいわゆるオアシス・スタイル。演奏はエッジが効いているのだけれど、意識的に音程を外すボーカルがなんとも不安定な感じを生み出している。前日に登場した「空きっ腹に酒」にも言えることなのだけれど、個人的に「若者的閉塞感気狂い系」とジャンル分けしたくなるバンド。このジャンルのバンドは意外と多いのではないかと思われるのだけれど、ルーキー・ステージに立って見劣りしない彼女たちは、やはり稀有な存在なのだろう。
最後、ギターのカナチャンは楽器を鳴らしたまま、なかば強引にステージに置き去りにして去って行った。もし彼女たちが来年のフジロックに登場してくれるとしたら、どのステージが良いだろう? 個人的には、レッドマーキーで今夜みたいな轟音をとどろかせてくれたら面白いと思う。
写真:岡村直昭
文章:小田葉子