2012年のアバロンフィールドは自然エネルギー推進市民フォーラム(REPP)、THE ATOMIC CAFE、原子力資料情報室(CINIC)と蒼々たる市民グループがずらりとそろったトークセッションで幕を開けた。 自然エネルギー推進市民フォーラムは1997年から、THE ATOMIC CAFEは1980年代から、原子力資料情報室は1970年代からそれぞれ活動を続けているとのこと。新旧の大御所がずらりと並んでいる様子はフジロックのブッキングをなんとなく思い出させる。
ソーラークッカーや携帯電話充電でフジロッカーにはすっかりおなじみ、「地域分散型エネルギー社会」や「自分達のエネルギーは自分達で作る社会」を提唱するREPPは、太陽光発電を使用した目玉焼きやポップコーン作り、自転車を利用した発電で忌野清志郎”田舎へ行こう!~Going Up The Country~”を流すという体験コーナーを紹介。
自然エネルギーは原発の代替ではなく、地産地消と同じように、適材適所でエネルギーを使って行く必要性について語っていた。
昨年のアバロンフィールドでおこなわれた伝説ともいえるYMOと加藤登紀子のトークショーが印象的だったTHE ATOMIC CAFEは、もともとは核兵器に関するドキュメンタリー映画THE ATOMIC CAFEの上映運動を契機にしてはじまったグループだ。84年に開催したアンチニュークリアフェスのエピソードを紹介し、今年も津田大介氏を中心としたトークセッションや各種ライブがアバロンフィールドでおこなうと話していた。
産業界や政治とは独立した形での独自の情報提供で知られるCINICのブースでは、今年は原子力発電所で作業員が使っている防護服を着て写真撮影を体験できるという。また、内閣官房国家戦略室がおこなっている2030年のエネルギー政策に関するパブリックコメントの受付もおこなう(原発依存度を0%、15%、20-25%の3つのシナリオから選ぶというパブリックコメントについてのリンク先は文末にもあります)。「たしかな情報を市民に届ければ、自ずと脱原発につながる」という言葉から、40年近く社会運動を続けて来た市民団体の誠実さと自信が感じられた。
今回のNGOヴィレッジトークは原子力という繊細かつ重大なテーマを中心としておきながら政治的プロバガンダはもちろんや放射性物質の危険性等についていたずらに煽るような姿勢は一切なく、正確な情報を得ることや自分で考えることの大切さが一貫して語られていたのは。トークセッションでは「安心をしたい気持ちがあると、都合の悪い、知りたくない情報に触れることが難しい」「大手マスコミには載せにくい、載りにくい情報がある」といった事柄が率直に語られ、情報の入手は、物事を人任せにせずに主体的になること、自分で考えることにつながることが確認された。
過剰さが抑えられた背景のひとつとして、各種団体の真摯な姿勢はもちろん、環境やエネルギーをはじめとした各種NPO/NGOの情報発信の場所という機能をアバロンフィールドがもともと持っている点も忘れてはいけないだろう。ロックフェスのなかに政治や社会の話が紛れ込んでいるのは、フジロッカーズにとっては311よりもずっと前から「そういうもの」だったのである(好き嫌いは別にして)。「知る」という態度を自分で自然と選び取る環境に身を置いているということの貴重さを改めて感じることができた朝のアバロンフィールドであった。
ーー
以下リンク
自然エネルギー推進市民フォーラム(REPP)
THE ATOMIC CAFE
原子力資料情報室(CINIC)
内閣官房 国家戦略室 3つのシナリオ − 話そう”エネルギーと環境のみらい”
NGOヴィレッジトーク 【知ろう!選ぼう!作ろう!私のエネルギー】
写真:直田 亨 文:永田夏来