GREEN STAGE, | 2012/07/27 17:20 UP

アトミック・カフェ トーク【津田大介・藤波心&かなる】

アトミックカフェはNGOヴィレッジ村長こと大久保青志やフジロックフェスティバルを主催する株式会社スマッシュ代表日高正博らを含む有志で80年代よりスタートした、反核・反原発イベントをオーガナイズする集まりが母体となったものである。アトミックカフェフェスティバルのタイトルで日比谷野外大音楽堂などで尾崎豊らが参加したフェスをとりおこなっていたがその後活動を中止し、20年以上休眠状態にあった。しかし昨年の福島第一原子力発電所事故を受けて活動を再開。昨年のフジロックではYMOと加藤登紀子によるシークレットトークセッションや斉藤和義らによるライブ等をおこない、他にも朝霧ジャムやアースガーデンなどでライブやトークセッションをおこなっている。

2012年のアトミックカフェトークはどのような活動をみせるのだろうか。岡林信康の名曲「私達の望むものは」がSEとして流れるアバロンフィールドは快晴にもめぐまれ、多くのお客さんが来場していた。

『動員の革命ーソーシャルメディアは何を変えたのか』や『情報の呼吸法』などの著書で知られるジャーナリスト/メディア・アクティビストの津田大介と(フジロッカーズにはJ-WAVE Jam the WORLDの火曜日ナビゲーターと言った方が良いか?)と5月に発売された”LOVE! LOVE! ハイロ!”が話題のアイドル藤波心(15歳)とかなる(12歳)、そして福井県の高速増殖炉もんじゅの非公式ゆるキャラ、もんじゅくんらによって、初日のトークセッションはスタートした。

兵庫県在住の綾波は、東日本大震災の復興支援について熱心に話し合っている両親と淡白な反応を示している同級生とのギャップが社会に関心を向けるきっかけのひとつとなったと語る。元々アイドルとして活動をしていた綾波が自分のBlogに原子力発電所についての考えを述べたところ膨大なコメントと反響を呼び、「脱原発アイドル」として活躍する運びになったのだ。そんな藤波を尊敬しているというかなるとふたりで結成したココロ&カナルによる”LOVE!LOVE!ハイロ”は、原発の廃炉と自然エネルギーへのシフトをめざすLOVE!ハイロキャンペーンの公式ソングである。

坂本龍一のRADIO SAKAMOTOではリミックスコンクールも開催されたという”LOVE!LOVE!ハイロ”は「アキシブ系」や「萌えテクノ」とも呼べるようなテクノポップで、ローティーンの女の子がピコピコとした楽曲に合わせて歌い踊るというライブにフジロックで対峙するとは思わなかったが、とてもかわいらしく楽しめるものであった。津田の話を聞きながらテクノポップを聞いているとここが苗場だということを忘れそうになるが、続いて登場したもんじゅくんによって会場の空気はさらに異質なワールドに変容していったのである。

「富士山はどこですかー?」「見たいバンドは、U-zhaan × mabanuaですだよー」などと(若干ウロですいません)と登場するなり飛ばしまくるもんじゅくんはその大きさとカラフルなビジュアルもあってかtwitterで見る以上の説得力とインパクトで、見る人をその場でファンにしてしまう魅力に溢れていた。最後に歌い踊った”もんじゅくん音頭”でアバロンフィールドは大団円を迎えたのである。

脱原発という共通の思いでそれぞれのフィールドから集まった今回の登壇者だが、これまでのフジロックではまずあり得なかった異色の顔合わせであった。これがロフトプラスワンや官邸前だったらそれほど違和感もないだろうが、いわゆる「ジュニアアイドル」の歌とダンスや着ぐるみと津田大介のトークをワールドミュージック・アコースティックよりのブッキングが多いアバロンフィールドで聞くことになるとは、誰も思わなかっただろう。しかもそれらのやりとりをきちんと体育座りをして聞いているのは、いつもの「アバロン・ヘブン系」。オーガニックコットンやヘンプをおしゃれに使いこなした、エスニックでカラフルないでたちのフジロッカーズなのだ。

トークショー自体ももちろん意義あることなのだが、次に登場するFRYING DUTCHMANがお目当なはずのオーディエンスをうまく巻き込んでいるこのシチュエーション自体がフジロックならではの「なんでもあり」をハイブリッドに実現していて、ちょっとした事件であるように思われる。脱原発という目標は、これまであり得なかった文化的邂逅を実現してしまっているのではないのだろうか。アトミックカフェというプロジェクトの末恐ろしさに考えさせられた午後のアバロンフィールドであった。


写真:直田亨 文:永田夏来
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