愛は苗場の夜空に解き放たれた
「Rookie ステージにて深夜03:00:00:00:00より 『愛』を放ちます。」
これはドラムの坂口がtwitterで発した言葉になるのだが、その愛(というかエネルギーといったほうがいいかも)を強く感じられるライヴだったといえるのではないだろうか。少なくとも僕はそう感じた。初日のルーキーステージの最後を飾る、石川県は金沢を拠点とするギターとドラムのインスト・デュオのNINGEN OKのライヴである。
予定の3時を過ぎてステージに姿を見せると、楽器を手にしてすぐには演奏せず、極限まで集中を高めていく。そして2,3分はその状態が続いただろうか。僅かな音がスピーカーからこぼれる中で、突如として空気を切り裂くようにドラムが打ち込まれ、ギターを掻き鳴らしてライヴが始まる。
ハードコアの破壊力からマスロックっぽい複雑な展開力までを備えるのが彼等のインストの特徴といえるだろう。流麗なアルペジオから耳を劈く爆音のギター、そして、タイトに引き締まったドラム。呼吸を合わせた2人の絶妙なコンビネーションとともに変則的な展開を突き進み、見るものを熱狂の渦に放り込んでいく。これが非常に痛快、痛快。3曲目からは、サポートの女性キーボーディストも加わってのトリオ編成で、肉体的なサウンドに柔らかな彩りまで添える。見るものを飽きさせないどころか逆に引き込んでいく展開力は素晴らしいし、感情や熱のこもった演奏には胸が知らぬ間に熱くなっている。観客の方もそのビートに体が動かされたようで、いつの間にか踊りだしている人は多かった。
そんなライヴを見ていて目につくのは、ギターの山下の顔であり、アクションっていう人は多かったのではないだろうか。そのことについてライヴ後に伺ってみると「(ギターの)テクニックが足りないのを顔でカバーしています。」と話してくれたのだが、予測不能の顔の表情や動きだけでもお金が取れるんじゃないかと思うぐらいに印象に残る。とはいえ、あの歪んだギターが放つ音にはかなり鼓膜をヒリヒリとさせられるはずだ。
ラストの曲では、ギターをスティックに持ち替えての打楽器祭も挾みつつ、雄叫びを上げながら一心不乱に弾き倒すギターとタイトなドラムが炸裂して、盛り上がりも最高潮。ぶちかました!そう表現したいほどに迫力満点のステージが繰り広げられたのであった。舞台を去る際に発した「ありがとうございました」という言葉。それは、自分たちが存分にライヴをやりきった!という強い想いを感じさせた。いやあ、ルーキーステージは今年も初日から火傷するほどに熱い。