楽しい「密」会
初日にひき続き、快晴で迎えたフジロック二日目の朝。おだやかな空気ただようジプシー・アヴァロンに、優しい歌声が響いていた。聴こえてくるのは、蜜の”HE”、そして松田聖子の”スウィート・メモリーズ”。今年フジロックに初登場する蜜がリハーサルを行っているのだ。今年の六月にアルバム『初恋カプセル』でデビューした「蜜」は、歌とともに鍵盤ハーモニカを担当する木村ウニと、ギターも担当する橋詰遼の、男女ボーカル「歌合戦」ユニットだ。
「こんにちは!蜜どす!」。元気な京都弁でそう挨拶する木村。彼女と橋詰が歌い始めたのは、”湊町パラダイス”。女性ボーカルから男性ボーカルへと、ときにかわるがわるメインボーカルをつとめ、ときに透明感あふれるハーモニーを聴かせてくれる二人の「歌合戦」は心地良くて、これからお昼どきに入ってほっとひと息ついているアヴァロン・ステージにピッタリ。
“Tasting of me”から、ボ・ガンボスの”トンネル抜けて”や矢野顕子の”ひとつだけ”などのカバー曲で聴かせてくれる彼ら。お互いに視線を合わせ、歌いだしのタイミングでフェイントをかけてみたり、息もぴったり&愛嬌もたっぷりだ。
ライヴ前半にしっとりと聴かせた流れから、後半は一気にテンション全開の彼ら。アップテンポで楽しい演奏へと展開して、たたみかけるようなコール&レスポンスへと突入。「あなたが踊り出せないとき、私が踊っているから、私が踊れなくなったら、あなたに踊っていて欲しい!」このフレーズをハイテンションでリピートしまくる木村と、落ち着いて演奏を続ける橋詰の対照的な姿も、見ていておかしい、楽しい。最後にはテンションの上がり過ぎた木村から「上がってんの!下がってんの!」のフレーズまでとび出し、「出口が見当たりません!」と合いの手を入れる橋詰に、これまた大笑い。和むなぁ。かわいいなぁ。
ラストは”踊り出せないLady”、そして10月にリリースされるという新曲”パープルスカイ”も披露された。最初はもっと草食系の大人しいボーカルユニットなのかなと思っていたけれど、フジロック初登場で良い意味で気持ち良くはっちゃけちゃっていた彼ら。次のフジロックでも、またどこかのステージでキラキラとはっちゃけながら、素敵な歌合戦を見せてくれる二人の姿が見たいなーと、思わせてくれる幸せなステージだったのだ。