限られた時間の中で描かれたビッグバン
灼熱の炎天下が続いた昨日、今日の苗場だが、ROVOの出演前からようやく太陽が雲に隠れた。涼しい山の風が火照った肌を冷やしてくれる。ひとつ前に出演したMONOが、オーケストラとの共演で壮大なサウンドスケープを描いたばかりだが、ROVOもまたどれだけ壮大な宇宙の旅へと連れて行ってくれるのだろう。そんな期待がホワイトステージに渦巻く中、メンバーが登場した。ホワイトステージへの出演は9年ぶりとはいえ、ここはフェス常連バンド、過剰な気負いのようなものは、一切感じられない。さらにいえば、勝井氏はROVO以外での出演を含めて、26ステージ目の出演となるとかで、観客の誰よりもフジロックマスターである(本人twitterより。なんでも2005年には5ステージも出演していたそう。脱帽)。
「楽しんでください」という一言とともに「SUKHNA」からライブは幕を開けた。その後も「ECLIPSE」「SINO + DUB」といった、かなり攻めのセットリストが続いた。強靭なツインドラムにうねるようなベースが絡み付き、そのリズム隊のうえで、ヴァイオリンが大暴れする。ギターも同じリフを繰り返して黒子に徹したり、ときには全面にでてきたりと、予測不能な動きで、楽曲に浮遊観を加える。ラストは「D.D.E」でホワイトステージに宇宙を生成した。
彼らが毎年日比谷野音で主催しているライブ・イベント「宇宙の日」とは異なり、フェスでのステージは当然のことながら限られた時間内での演奏となる。彼らのファンだけが見に来るとも限らない。また、同じフジロックという場所でも、例えばフィールドオブヘブンのように空間がもつ独特の雰囲気を見方につけることもできない、ある意味もっともニュートラルなステージといえるホワイトステージでの演奏だ。その中で異様なまでの集中力と緊張感、そして攻めのセットリストをもってビッグバンのごとき宇宙の爆発を描いたROVOは、やはり素晴らしい。
最後に記しておきたいのは、身動きもとれないほどの集客だったこと。彼らの人気では、もうホワイトステージでは手狭なのかもしれない。次回のフジロック出演は、夕方から夜にかけてのグリーンステージでの出演なんかいかがだろうか。